癒しのこころみ 自分を好きになる方法の映画専門家レビュー一覧

癒しのこころみ 自分を好きになる方法

「影踏み」の篠原哲雄が新人セラピストの姿を描くヒューマンドラマ。広告代理店の激務で心身ともに疲れ果て、勢いで会社を辞めた里奈は、有名セラピストとの出会いをきっかけにセラピストの道へ。ある日、客として来た元プロ野球選手の碓氷を怒らせてしまう。出演は、「フォルトゥナの瞳」の松井愛莉、「DTC 湯けむり純情篇 from HiGH&LOW」の八木将康、「ジャンクション29」の水野勝。
  • 映画評論家

    川口敦子

    中島、橋本、さらには藤原さえもがしっくりともう若くはない女の、だからこその奥行をそっと覗かせ光っている。前作「影踏み」の中村、尾野もそうだった。「山桜」の田中のきりりと固い蕾の若さの向こうにも艶やかに年増の色を予感させた監督篠原の強味を改めて確認する。その監督が今どき稀な職人芸の慎みの奥で追ってきた挫折者同士の再生の物語が脚本の協力も得てじわりと浮上する。手と手がふれて淡い想いが立ちのぼる一瞬。別れの前の疾走。紋切型を蹴散らす素敵が見えた。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    今回評した他の作品がとくにその面で難ありだったこともあるが、篠原哲雄らしい俳優の動かし方の巧さ、タイプキャストにそれ以上の含みをもたせようとする演出のたくらみにだいぶ救われた。藤原紀香演じるカリスマセラピストの言い知れぬ胡散臭さなど捻れた面白みがある。ただ、それがなければ到底観ていられないくらい紋切り型、予定調和が連発されるシナリオ、もう少しなんとかならなかったのか。安直にラブストーリーのカタルシスに落とし込まない心意気は買いたいのだが……。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    宣伝映画だ。ドキュメンタリーで本物のセラピストの「施術」を見せたらいいと思うが、これは半端に金をかけた劇映画。篠原監督や撮影の長田勇市の考えてきた「映画」がどう作動するかという興味で見た。「癒し」や「リラクゼーション」が、言葉としては無力でも実はこういうことだとハッとさせるような発見があるかどうか。ない。ここでの映画人のプロ性は、わかりやすく、浅く、という方向に働くだけ。「では右肩からほぐしていきますね」とか健気に言う松井愛莉に同情した。

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