グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇の映画専門家レビュー一覧

グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇

太宰治の未完の遺作をケラリーノ・サンドロヴィッチが独自の視線で完成させ、第23回読売演劇大賞最優秀作品賞を獲得した戯曲『グッドバイ』を映画化。雑誌編集長の田島は複数の愛人たちと別れるため、ガサツだけど実は美人のキヌ子と嘘夫婦を演じるが……。出演は、「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の大泉洋、舞台版で同役を演じ読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞した小池栄子、「後妻業の女」の水川あさみ、「ここは退屈迎えに来て」の橋本愛、「春待つ僕ら」の緒川たまき、「ユリゴコロ」の木村多江、「決算!忠臣蔵」の濱田岳、「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」の松重豊。監督は、「八日目の蝉」の成島出。
  • フリーライター

    須永貴子

    小池栄子が演じる大食らいで力持ち、そして業突く張りのキヌ子の全身から、生命力が溢れている。大泉洋がいつもとは違う引き算の芝居で演じた田島にも、女たちが放っておけない吸引力がある。契約で結ばれた男女が、くっつきそうでなかなかくっつかないという少女漫画的な展開をもうひと盛り上げするための、「死んだと思ったら実は生きていた」という仕掛けはやや強引だが、大衆的な娯楽作としては及第点。田島の本妻や愛人たちを演じる女優陣も適材適所のキャスティング。衣裳も素敵。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    監督自らの企画と聞く。自分がやりたいものがこうして出来るとはなんと幸せなことなのか。原作は「太宰の絶筆」というより、それを戯曲にしたもの。未見だが評判の舞台のようだ。それを一級の脚本家と監督が料理する。文句はあるまい。が、やはりもとは太宰治。得意の陰湿な情愛ものでないのが救いだが、どうしても偽臭い太宰のフィルターがかかってしまう。映画は面白い。だが、釈然としない。「据え膳食わぬは男の恥」。他に食べたいものがあったのに据え膳だから食べた、ような感じがした。

  • 映画評論家

    吉田広明

    優しすぎるがゆえに多数の愛人たちを抱えた男が、偽の妻とともに彼女らとの関係を切る。ブラックでアイロニカルな「黒い十人の女」を期待はしないが、十数人の愛人が入れ替わり立ち替わりのスラプスティックかと思いきや、人情ものに落ち着く展開。太宰の原作自体軽妙なものであるにせよ、倫理的にキワキワ故に新たな人の道を夢想させる無頼派の秩序破壊的な側面だけは令和風に温められたごく微温的作品。敗戦直後を意識した擬古的な画面、小池栄子の若干舞台臭のする演技も微妙。

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