凱里ブルースの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
小野寺系
夢を見ているような、湿気に包まれた亜熱帯の凱里市をとらえた長回しや、「ラ・シオタ駅への列車の到着」を想起させる、度肝を抜く角度からの列車撮影、驚愕せずにおれないラストシーンなど、映画を遊び場にするように次々に突飛な発想が沸き出るのには感嘆する他ない。切実なテーマさえ見つかれば、すぐにでも巨匠の器だ。ホウ・シャオシェンの「憂鬱な楽園」のイメージ引用も見られるように、90年代アート映画の断片がビー・ガンの基にあることも確認できた。
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映画評論家
きさらぎ尚
ビー・ガン監督のデビュー作にあたるこの作品は、詩人でもある監督らしく詩的な映像世界があり、かと思えば映画的に構築された物語あり。かつまた圧倒的に美しく侵しがたい自然と、動的な時間を織りまぜる。ドキュメンタリーのようであり、幻想のようでもあり。いなくなった甥を連れ戻すための主人公の旅を通して、人、物、時間が絡み合う詩的な表現のドラマは言葉にするのが難しい(言い訳がましいが)。けれど、湿気を含んで生温かい風合いの映像が物語るのは監督の豊かな表現力だ。
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映画監督、脚本家
城定秀夫
やってることが基本「ロングデイズ・ジャーニー」と一緒だし、デビュー作ということで全体的に作りが荒く、40分ワンカットシーンは、ひたすら人物を追いかけるカメラの手ブレを後処理で補正するスタビライザーの質の悪さゆえなのか画面がグワングワン歪んでしまっており、手ブレを甘受する潔さがないのなら普通にカットを割れよ、と意地悪なことを考えてしまったが、郷愁漂う雰囲気は悪くないし、東洋哲学的な時間の概念を映画として表現する試みも、まあ、面白かった……かな?
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