高津川の映画専門家レビュー一覧

高津川

島根県西部を流れる清流・高津川を舞台に、「僕に、会いたかった」の錦織良成監督が地方の問題に直面しながらも石見神楽の伝承を続ける人々の日常を描いた人間ドラマ。小学校が閉校することになり、母校最後の運動会に日本各地にいる卒業生を集める話が出る。錦織監督による故郷・島根を舞台にした島根シリーズの一作。無口で不器用な父親・学を「渾身 KON-SHIN」などバイプレイヤーとして知られる甲本雅裕が演じ、映画初主演。2019年11月29日より島根・鳥取・広島にて公開、ほか順次ロードショー。
  • フリーライター

    須永貴子

    日本遺産の石見神楽、日本の一級河川で唯一ダムのない高津川、そこで捕れた鮎など、地域の名産や名物を詰め込み、無理筋ではないシナリオにきれいにまとめあげたお国自慢映画。清流や雲海をフィルムで撮影した映像は、「行ってみたいな」と思わせる美しさ。だが、エンターテインメントとしては、ストーリーやメッセージ、劇伴など、すべてがあまりにも既視感があり優等生的。石見神楽にまつわるシーンだけで、芸術(娯楽)としての純度が高いため、それ以外のすべてが蛇足に見える。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    ダムがない日本一の清流と言われる高津川。その流域に暮らす人たちの様々な人間模様。そう聞けば、およそどんな映画なのか想像がつき、想像通りに話が進む。悪くはない。親切な道案内を得ているようなものだ。それで心に染みるんなら文句はないが、染みることはなかった。小学校の閉校、リゾート開発、認知症など様々な問題を抱えながら、住民は誠実に生きていく。が、テーマがとっ散らかっていて、人物を深く掘り下げているようにも見えない。もっといい映画になった筈なのに……。

  • 映画評論家

    吉田広明

    田舎礼賛映画。東京の大学にやった息子が、このすばらしい田舎を捨てるなんて何を学んだのか、とか、全部機械化で職人の腕が消えてしまっていいのか、とか、長回しで良い場面ぶる上に、問題意識が古くさくて繰り言にしか聞こえない。なぜこうなるのかという構造的問題まで目が届いていないから、ではどうすればという展開もない。故郷を捨てた個人が悪いということになり、一人の改心でハッピーエンドという安易さ。発想も演出も凡庸。フィルム撮りなのに発色がおかしいのも問題。

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