犬王の映画専門家レビュー一覧
犬王
国内外で高い人気と評価を得る、湯浅政明監督の最新作。脚本に野木亜紀子、キャラクター原案に松本大洋、音楽に大友良英という夢のコラボが実現。変幻自在のイマジネーションが炸裂する“狂騒のミュージカル・アニメーション”。原作は歴史に隠された能楽師=ポップスターの犬王を大胆不敵な解釈で捉えなおした古川日出男の著書『平家物語 犬王の巻』(河出文庫刊)。カリスマ性と歌唱力、そして野心を抱く主人公・犬王を人気バンド「女王蜂」のボーカル担当・アヴちゃん、その相棒となる琵琶法師・友魚(ともな)を実力派俳優・森山未來が演じ、サクセスストーリーにして、切ない友情の物語が展開する。ヒップホップやロックが入り混じり、歓喜する民衆のイメージの洪水はまるで狂熱の野外フェスのよう。2021年・第78回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門のプレミア上映では “ロックオペラ”と評された。
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
舞台設定とキャラクターのユニークさ、アニメーションのクオリティ、いずれも圧巻。肝心要の犬王のパフォーマンスが始まるまでの冒頭30分ほどは大いに興奮したのだが。例えば「竜とそばかすの姫」も同じ問題を抱えていたが、せっかくアニメという海外市場に開かれた表現フォーマットなのに、音楽のディレクションがあまりにドメスティック志向であること、そしてその音楽にあまりにも物語のカタルシスが依存していることで、作品の可能性をスポイルしているように思えてならない。
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映画評論家
北川れい子
面白さにゾクゾクした。不勉強で古川日出男の原作も、能楽師・犬王のことも全く知らなかったが、時代も人物たちも、毒のある物語も、ロックな音楽も、強烈にスリリングで、作品のパワーにただただしびれて、圧倒され。色彩がまた物語を立体化しているのも素晴らしい。壇之浦で滅びた平家の怨念で盲目となり、やがて琵琶法師に弟子入りする友魚と、能楽師の血をひく異形、異端の怪物・犬王。決闘さながらの熱く激しい2人の共演はまさに神憑り的。この作品の関係者全てに平伏だ。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
前回の本欄でアニメ界内幕もの「ハケンアニメ!」と、アニメ「バブル」を紹介したが、「ハケンアニメ!」世界ではジブリアニメ的なものはどう位置づけられてる?と私に問うた友人がいた。それは描かれてない。そう。魔法少女、ロボット、「バブル」的なもの以外に、ジブリや湯浅政明あり。この、サブでないマジ・カルチャーの器としてのアニメの大きさ強さを忘れてはいけない。能もダンサー&個性派俳優もグラムパンクバンドのフロントパーソンも矯めることなく入る「犬王」。
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