架空OL日記の映画専門家レビュー一覧

架空OL日記

バカリズムが原作・脚本・主演を務め、第55回ギャラクシー奨励賞、第36回向田邦子賞などを受賞した同名連続ドラマの映画化。バカリズムらドラマの主要キャラクターはそのままに、新たなキャストを加え、銀行員OLの“私”と同僚たちの日常を綴っていく。出演は、「ブルーアワーにぶっ飛ばす」の夏帆、「美人が婚活してみたら」の臼田あさ美、「高崎グラフィティ。」の佐藤玲、「夕陽のあと」の山田真歩。監督はドラマ版に引き続き、住田崇が担当。
  • フリーライター

    須永貴子

    職場の平和と秩序を至上とするOLたちの、共感力と毒舌が混在する楽しいやりとりに紛れた鋭利な言葉にハッとする。たとえば、オフィスの空調を下げた社員Aについての、「今のうちらに必要なのは真実よりも矛先だから、Aを犯人ということにして、心ゆくまで悪口を言おう」という台詞。脚本を手掛けるバカリズムの人間に対する観察と冷徹な分析が、OLのキャラクターに落とし込まれ、日常会話に仕立てられている。ドラマ版を経たからか、役者たちのかけあいも心地良い。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    映画を観てると、時々他事を考えてしまう。退屈な映画だと尚更だが、これは他事を考えさせない稀有なもの。大きな出来事もサスペンスもアクションもなく、クライマックスすらないのに時間を忘れて観た。これは一つの偉業である。退屈な日常をちょっと面白くするヒントをもらった気がした。バカリズムという人の才気が人を幸せにする。が、彼が主演をしたことで、バラエティー色を強めている。普通に女優を主役にしていたら、どんな映画になっただろうかと観終わって思ったのだった。

  • 映画評論家

    吉田広明

    コントの数珠つなぎでは90分持つのかという危惧があったが杞憂で、挿話自体がドラマで一回練り上げられて面白いし、挿話の連鎖でキャラも立ち、同じ挿話の少しずれた反復など時間経過を利用するので一本の映画としてそれなりに持続している。男が演じるOLという主人公の立ち位置は絶妙で、男の視線から距離を持ってOLたちを見る対象化と、同じ女子としてあるあるネタに共感する同一化を同時に実現している。あまり映画として構えず、日常ものアニメの実写版のようにして見るべき。

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