デッド・ドント・ダイの映画専門家レビュー一覧

デッド・ドント・ダイ

第72回カンヌ国際映画祭のオープニングを飾ったジム・ジャームッシュによるゾンビ・コメディ。アメリカの田舎町で、次々と墓場から死者が蘇る事態が発生。3人だけの警察署で勤務するピーターソン巡査や葬儀屋のゼルダが退治するが、ゾンビは増殖していく。出演は、「ゴーストバスターズ」のビル・マーレイ、「パターソン」のアダム・ドライバー、「サスペリア」のティルダ・スウィントン、「荒野にて」のクロエ・セヴィニー。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    最近のジャームッシュ先生は吸血鬼やホラーに凝っているようだ。まるでゴールデン街で飲んでいる友人監督が撮ったような作品。しかしそうではない。ハリウッドの価値観や手法ではなく、あくまでも映画制作の楽しさ、批評性が伝わってくる。デッド(死者)とは役者や監督のことか。彼らは飼い慣らされず、自由に、有名人であるから無名で遊ぶ。役者という死者を永遠に延命させる重要な作品だ。そしてサミュエル・フラーの墓標もあり、いずれ這い出しゾンビとして徘徊するのだろう。

  • フリーライター

    藤木TDC

    ジャームッシュも古希間近。初期作の直撃を受けた世代としては悲しい限りだが、年寄りが思いつきでジャンル映画に手を出すべきでない見本であり、A・ドライヴァーが出てなければDVDストレートで充分と思える不出来。ゾンビ物はアイデアと意欲のある若手監督にまかせるべきとつくづく思った。全く笑えない禁じ手を重ねる苦肉の終盤は老醜を見るようで切なく、象徴的なタイトルはもしや「俺はまだ死んでない」の意なのかと一瞬考えたが、監督もそこまで自虐趣味じゃなかろう。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    自然とシュールなユーモアに向かうタイプの人が、ベタな笑いに挑んだときのお里が知れる感がすごい。ゾンビが繰り返す言葉のセンスなど居たたまれない気分になる。意外なのはロメロに対する敬意のなさで、シネフィルなら遵守せずにいられない、元来のゾンビ殺害ルールを無視しているのに驚く。常連俳優たちを観るジャームッシュ演芸大会的な愉しさはあるが、吸血鬼なら新たなドラマを作れるのに、ゾンビになるととっ散らかるとは、撮ってみなければわからないものだなと思う。

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