浅田家!の映画専門家レビュー一覧

浅田家!

家族が様々なコスプレをした家族写真を世に送り出した写真家・浅田政志の実話を二宮和也主演で映画化。家族が“なりたかった自分”のコスプレをした家族写真をきっかけにプロの写真家として軌道に乗り始めた政志だったが、そんなとき、東日本大震災が起こる。監督は、「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太。出演は、「怒り」の妻夫木聡、「ビブリア古書堂の事件手帖」の黒木華、「糸」の菅田将暉、「マチネの終わりに」の風吹ジュン、「Fukushima 50」の平田満。
  • フリーライター

    須永貴子

    「家族とは何か」「写真の力」といったテーマと、「写真洗浄」というドラマにおけるフックが明快で、非常に観やすく、のどごしの良い作品になっている。一方で、家族(主人公の実家も夫婦関係も)や写真のポジティブな面ばかりが打ち出されており、実話をベースにしたとは思えない、ファンタスティックな仕上がりに。妻夫木聡が演じる長男が、物語において見せ場がなく、あからさまに観客との懸け橋役を担わされていて不憫。それが長男と言われればそうなのかもしれないが。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    シャーデンフロイデ。人が不幸になると、脳内物質・オキシトシンの分泌が活発になり、喜びを感じる。人間は因果な生き物。で、浅田家の幸せな模様をいくら見せられても退屈、このままずっとこれが続いたらどうしようと思ったところに東日本大震災。ここから話が始まる。カメラマンが写真を撮らず、洗浄するというのがいい。核となるエピソードは個人的な経緯ですぐにネタバレしたが、やはりいい。黒木の若奈はヒット! でも、浅田氏はなぜこんなに家族にこだわったんだろう。

  • 映画評論家

    吉田広明

    その人を理解しない限り写真を撮らないという主人公が震災で持ち主が分からなくなった写真に関わるから痛ましさが増す。写真はその人そのもの、もっと言えば身体だ。写真を洗う作業はまるで遺体を清める作業を思わせる。物体としての写真は無くなる。それは死に近い。しかし一方で、物体だからこそ残り、また見つかるということもあるわけで、それは蘇りであり、その感動は、クラウド上に保存されたイメージの発見と比ぶべくもない。写真が紙であることの意味を考えさせる映画。

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