屍人荘の殺人の映画専門家レビュー一覧

屍人荘の殺人

このミステリーがすごい!2018年版第1位など国内ミステリー小説賞4冠に輝いた同名作を「任侠学園」の木村ひさし監督が映画化。女子大生探偵・比留子に持ち掛けられミステリー愛好会の明智と葉村が向かったロックフェス研究会の合宿先で連続殺人事件が起こる。ミステリー小説オタクながら全く推理が当たらない葉村譲を「フォルトゥナの瞳」の神木隆之介が、ミステリー愛好会会長の明智恭介を「星ガ丘ワンダーランド」の中村倫也が、謎の女子大生・剣崎比留子を「賭ケグルイ」の浜辺美波が演じる。
  • 映画評論家

    川口敦子

    今の大学ってこんな感じ!? と、その幼さと知性の欠片も見当たらない導入部に膨らんだ暗澹たる予感の割には神木や浜辺の役作り、独特のセリフ回しや間の外し方に時々、巻き込まれもしたのだが、原作があるとはいえホラーと謎ときミステリー、ゾンビと密室殺人を合体させておけば面白くないはずないでしょ――というような安易さが透けて見える企画の中でそうやって懸命に演じているキャストも、彼らを支えるスタッフも、はたまたそんな日本映画の現状も虚しく気の毒と改めて痛感した。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    「奇抜」をねらったミエミエの作劇がつらい。なにより人体損壊シーンを安っぽいレントゲンCGで処理して済ませてしまうセンスのなさには愕然とした。浜辺美波は好演しているものの、演出がキャラの二面性を活かしきれていない。殺人の動機となる事件の描き方といい、荒唐無稽な話だからこそ、そうした細部はピリリと真剣に締めるべきだったのでは(柄本時生を起用しておきながら、この扱いは酷すぎる)。90年代TVドラマの薄い再現をいまさらやったところで一体誰が喜ぶのだろう。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    これ、ミステリーの本格+荒唐無稽というものだろうか。ちょっとだけブニュエルの「皆殺しの天使」風になるが、そんな狙いがあるとも思えない。むりやり作った話。木村監督は、映画らしさにこだわらず、小技で進行をもたせる。メリハリもよくないけど、かえってふしぎな余力感が残されている。実年齢より若い役でときに苦しさも見える神木隆之介。それでも、なるほど、迷宮太郎かと安心させる。いい役者なのだ。浜辺美波の硬さもキャラに合って、人物配置の整理はついている。

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