一度死んでみたの映画専門家レビュー一覧

一度死んでみた

「ラストレター」の広瀬すずがデスメタル女子に扮するコメディ。反抗期を引きずる女子大生・七瀬は、父・計のことが大嫌い。ある日、計は自身が経営する製薬会社の新薬を飲み仮死状態になる。ところが、ライバル会社の陰謀で火葬されそうになってしまい……。出演は、「キングダム」の吉沢亮、「決算!忠臣蔵」の堤真一。監督は、auのCMを手掛けるCMディレクターの浜崎慎治。脚本は、「ジャッジ!」の澤本嘉光。
  • 映画評論家

    川口敦子

    豪華なゲストスターをわさわさと動員しただけの空騒ぎじゃないかしらと、つい身構えて銀幕に向かったが杞憂だった。あ、そういうことかとジュリエット嬢ならぬ錠にふふんと笑ったあたりから、観客の予期を手玉にとる展開の妙、幽霊コメディ以下、往年の聖林映画のパターンをきちんとふまえた脚本と演出の真面目なふざけ方に巻き込まれる。あのアルプスの少女を腹黒な高笑いで包んだCMクリエイターの逆転のセンス、長篇映画でもぴりりと効いてコメディエンヌ広瀬、OKデス!

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    大嫌いな家庭教師のトライのハイジパロディCMを手がけた監督・脚本コンビの映画と聞き覚悟して臨んだが、不安が的中。デスメタルバンドのボーカルであるはずの広瀬すずは劇中一度もデスメタルを歌わない。彼女は幽霊が見えるという設定だが、カビの生えたギャグをやってみせる以上の理由がそこにない。そして、反抗的な娘が抑圧的な父親に振り回されたあげく丸め込まれる展開に唖然。無自覚な父性の礼賛やフィロソフィ皆無の死のドラマを軽いコメディだからと受け流したくない。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    二日間だけ死ぬ薬。死んでみてわかること。というが、この場合、見えてくるのは死なずともわかりそうなこと。いい側もわるい側も手抜かりが多い。わざと他愛のなさを狙った喜劇だろうか。楽しそうに健闘している広瀬すずだが、その役は「とりあえず反抗しているだけ」でコシがない。作品全体もそんな感じ。みんな、しどころ不足の、本気で怒らない役。浜崎監督はケレン味をスマートに出そうとするけど、匂いの扱い方など、泥くさい。「魂、入ってる」についても思考が見えない。

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