殺し屋たちの挽歌の映画専門家レビュー一覧

殺し屋たちの挽歌

「クイーン」のスティーブン・フリアーズ監督のイギリス時代初期の作品。仲間を裏切りスペインで暮らす男の下へ、ボスの命令で連れ戻しに来たふたりの殺し屋が現れる。そこへ誘拐事件に巻き込まれた少女が加わり奇妙な4人旅が始まる。主題歌はエリック・クラプトン。名作を12ヶ月連続、1ヶ月に1本ずつ月替わりで上映する特集上映『12ヶ月のシネマリレー』にて劇場公開。
  • 映画評論家

    上島春彦

    初っ端から凄いクレーンワーク撮影の連続技に痺れる。舞台が変わるとフライシャーの「ラスト・ラン」を彷彿とさせる逃走劇が主筋になる。チンピラのティム・ロスと倦怠感を漂わせるジョン・ハートのコンビがグッド。彼らに連行されるのは時に哲学的なテレンス・スタンプでこれまた良好。ところが終盤に至り突然脚本がバカになる。何があったのか。英国作家は不条理が好きなので、そっちをやりたくなったのか。あるいは話を終わらせる必要が突如生じたのか。一種、見ものではあるが。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    スティーヴン・フリアーズが監督した「プリック・アップ」や「マイ・ビューティフル・ランドレッド」はゲイ映画の重要作であるが、そうしたテーマを少しずらして描きたいことを描いているような印象を受けた。たとえば「堕天使のパスポート」のような傑作や、「わたしの可愛い人 シェリ」のような駄作からなる玉石混淆のフィルモグラフィの中で、本作はフリアーズの間の抜けたテンポが奏功した異色なロードムービーの佳作。独自の哲学を持つテレンス・スタンプの存在感が効いている。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    裏切りをおかし拉致された殺し屋と情婦、拉致した殺し屋による奇妙な共依存ロードムービー。すぐにでも始末すればいいのにそれはせず、目的から逃れ弛緩した時間はやがて豊かさをまとい、映画としか呼べないなにかへと変わっていく。滝のシーンの視線の交錯などを見ていると、あの頃の映画はいまも映画のまま少しもブレずにそこにいて、ブレてしまった、映画から離れてしまったのは日頃トラッシーな映像ばかり眼球から摂取しているわれわれの方なのかもしれないと恥ずかしくなった。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事