「或る殺人(1959)」のストーリー

ポール・ビーグラー(ジェームズ・スチュアート)は元ミシガン州検事で、今は魚釣りを楽しむ弁護士だった。ある日、彼はローラ・マニオン(リー・レミック)という女性から、夫の陸軍中尉マニオン(ベン・ギャザラ)の起こした射殺事件の弁護を依頼された。被告の状況が不利だとか、担当検事が彼の競争相手だとかで、ポールは乗り気ではなかった。だが今はアル中で落ちぶれているが、昔は有名な法律家だった親友のパーネル(アーサー・オコンネル)のすすめもあり、ポールは引き受けることにした。ローラは挑発的な女で、そこから事件の原因、嫉妬深いマニオンが衆人の中でバーニイ・クイルを殺したかも想像できた。彼女の説明によると、その晩、クイルの酒場からの帰り森にさしかかったときクイルが彼女に挑み、拒否されると暴力で犯したという。マニオンは、事件当時のことは精神が錯乱していて分からないと言う。中央からベテラン検事ダンサー(ジョージ・C・スコット)が派遣されてきた。ポールの証拠集めは、はかばかしくなかった。警察医の報告では、ローラが犯されてないという。検察側は彼女の強姦されたという供述は、男との不倫関係を隠すためだと主張した。パーネルも酒を断って協力したが、有利な判例はなかった。いよいよ公判が始まった。検察側は多くの証人を喚問し、ダンサー検事の巧みな誘導訊問で、被告は不利になるばかりだった。ローラの犯された証拠も出てこなかった。次の公判で、ポールは警察のカメラマンの落度を指摘し、現場で最初に立ち会った警官から、ローラが犯された事実を証明させた。これで殺人動機は明らかになった。陸軍病院の精神鑑定は、マニオンの当夜の行動は不可抗力の衝動、一時的の精神異常と断言した。ポールはミシガン最高裁で「不可抗力の衝動」による抗弁が勝訴になった判例を発見。検察側はこれで旗色が悪くなった。ポールはクイルと特別な関係があると噂されている酒場の支配人メリー(キャサリン・グラント)に会った。彼女を通してバーテンの証言をとろうとしたが、ダメだった。検察側はマニオンと同房の男を証人にたてた。彼は、マニオンが法廷での証言は全部嘘だと言った、と証言する。しかし、この男は偽証罪などの前科者で、検事に指示されて打った芝居と分かった。パーネルはメリーが私生児という事実を発見した。最後の公判で、メリーは事件の翌朝、クイルの寝室のそばで1枚のパンティを見つけたと証言した。それはローラのものだった。検事はメリーをクイルの情婦だと鋭く追求したが、結局はクイルが彼女の父だとわかり万事休した。マニオンは無罪。ところが、マニオン夫妻は「“不可抗力の衝動”で町を去る」という皮肉な置手紙を置いて町を去った。ポールやパーネルに弁護料を払わずに。