「天心の譜」のストーリー

自閉症で知的障害のある田口麻紀子は、小さいころからバイオリンを弾いていた。小林研一郎が企画したこのコンサートで彼女は、世界の一線で活躍するバイオリン奏者の瀬崎明日香、川畠成道、安倍真也、劇画家で声音家の池田理代子らとの共演が実現。障がいのある、なしにかかわらず、その人らしく活き活きと演奏してほしいとの趣旨で始まった半年の日々。それは、練習から公演まで小林研一郎との心を刺激しあう貴重な時間であった。そんな彼らにカメラを向けたのが、2005年、長野県で開催されたスペシャルオリンピックス冬季世界大会の記録班として誕生した知的障がいのある9人の“ビリーブクルー”。だが2011年3月11日、震災と津波が日本を襲い、福島県いわき市出身の小林研一郎は「肉体を失った人々が、どんな思いで魂となったのか、それを思うと今残されたものたちのことを考えることはとても……」と言葉を失う。2011年6月、経済的な危機が深刻なギリシャのアテネでスペシャルオリンピックス夏季世界大会が開催、参加した日本選手団の中には震災で被災したアスリートがいた。小原愛美と棚橋直也。一旦は参加を断念した彼らだったが、世界大会で見事な活躍をみせてくれる。2011年秋、津波で校舎も楽器も失くした豊間中学校の生徒を前に、小林研一郎が特別授業を行っている。即興のピアノ演奏を交え、皆が強い気持ちで生きていくことを彼は願っていた……。