「M(2006)」のストーリー

28歳の主婦、聡子(美元)は、夫・秀之(大森南朋)と息子の3人で幸せに暮らしていた。しかし、そんな平凡な毎日に聡子は退屈を感じる。ある日聡子は出会い系サイトに書き込みをし、男と情事を重ねるようになる聡子。秀之は、妻がどんどん綺麗になっていくことに気がついていた。会社の後輩から渡された画像が入ったCD-ROMを深夜会社で見ていると、目を隠された大量のいやらしい写真があり、妻のものと思しき口元が写った写真もあった。膨らむ妄想に戸惑いつつも支配されていく秀之。自我と妄想の中で困惑していく秀之は、鬱屈した思いを風俗嬢にぶつけることしか出来なかった。新聞配達をしている稔(高良健吾)には幼少の頃、父親から暴力を受けている母親を助けようとして父親を刺殺し、そのせいで母親に捨てられたという過去があった。ある日配達中に、ひとりで佇んでいる少年と出会う。一緒にキャッチボールをしていると、母親が迎えに来て、手を繋ぎ帰っていった。夕日の中歩く二人の影は、稔が抱く理想の姿だった。しかし母親・聡子が垣間見せたおびえた目が、稔はなぜか引っ掛かる…。日常に退屈していた稔に、仕事仲間がエロサイトを無理矢理見せてくる。稔は、目の隠された女の写真を見入る。…あの、少年の母親か? 稔は聡子を自分の母親に姿を重ねてしまう。ある日集金のために家を回っていると、聡子が出てきた。なにかにおびえながら歩く聡子が気になり後をつけていくと、柄の悪い男と落ち合い、一人でラブホテルに入っていくのだった。稔は聡子の家に行き、聡子を説得する。しかし聡子はそんな稔に体を委ね、稔に許しを乞う。突き飛ばし、家を飛び出る稔。聡子の気持ちが分からなかった。聡子は数度、知らない男と情事を重ね、報酬をもらっていた。そんな中出会った俵(田口トモロヲ)は、身なりのきちんとした優しい男。しかし部屋に入ると俵の態度が豹変した。実は俵はヤクザで、聡子に売春を強要したのだった。首を絞められ殺される、という恐怖の中で、聡子が初めて知ってしまった悦び。その後も俵から連絡があると、怯えながらも聡子は出かけてしまうのだった……。