「波の数だけ抱きしめて」のストーリー

1991年11月。東京の教会で行われた真理子の結婚式に、旧友の小杉、芹沢、裕子、吉岡の4人が集まった。式の帰り、小杉と芹沢はクルマを飛ばして横横経由で長柄のトンネルを抜け、134号線を茅ヶ崎に向かう。1982年5月。大学4年生の小杉、芹沢、裕子、真理子の4人は、真理子のバイト先のサーフショップを拠点にノンストップ・ミュージックのミニFM局Kiwiを運営していた。彼らは学生生活最後の夏休みに何か大きなことをやりたいと無線マニアの芹沢の発案でFM局を始めたのだった。自分たちの放送が湘南じゅうの海岸で聞けるようになることを夢見る彼らにとって、真理子のDJとしての才能は不可欠だったが、その真理子はロスアンゼルスにいる両親から航空券を送りつけられており、7月にはロスの大学に編入しなければならない。真理子は小杉に引きとめてほしいのだが、シャイな小杉は「好きだ」の一言が言えない。そんなある日、彼らの前に若い広告マンの吉岡が現れる。真理子に一目ぼれした吉岡は、FM放送局の計画を知り、真理子を取り入れる為に中継局作りに積極的に協力しはじめる。そしてKiwiは二人の男の真理子への思いをエネルギーにして、国道134号線沿いに江ノ島方向へ急速に伸び始める。そんな時、吉岡は会社の上司から専売公社が森戸にひと夏オープンするアンテナショップで行うイベントの企画を命じられ、茅ヶ崎から森戸まで湘南の海辺をカバーするFM放送局「FM湘南」の設立を提案。Kiwiは森戸を目指してさらに伸びていく。同時に吉岡は真理子に9月までアメリカ行きを延ばすよう頼み込み、真理子もそれを了承するのだった。7月、中継局が葉山まで伸び、いよいよ明日はスポンサーが試験放送を聞きにくるという晩、小杉は真理子に気持ちを打ち明けようと決心し、真理子を呼び出すが、ふとした行き違いから真理子の気持ちが完全に吉岡に移ったものと誤解。一方真理子も小杉に思いを寄せていた裕子が小杉と抱き合っているのを目撃して、深く傷つきアメリカへの旅立ちを決心する。芹沢と裕子は、真理子と小杉の仲を取り持つ為、試験放送を犠牲にして、小杉の「愛してる」という言葉を電波に乗せ、真理子のクルマに乗せようとする。だが、この放送が失敗すれば吉岡は会社をクビになるのだ。悩んだ末、小杉はマイクに向かうが、間一髪で真理子のクルマは長柄のトンネルに入り、その思いは伝えられなかったのだった。