「5時から7時までのクレオ」のストーリー

クレオ(コリンヌ・マルシャン)はブロンド髪の美しい娘。が、最近クレオは悩んでいる。体の具合が悪いのだ。もしガンだったら……と思うと、いてもたってもいられない。先日、彼女は病院で精密検査を受けた。結果の出るのは今日の夕刻。クレオはその時刻の来るのがこわかった。五時。クレオは女占師の前に腰をおろす。占師は彼女が病気であることを見透した。やっぱり……。絶望におそわれたクレオはアパートに帰った。恋人ジョゼがやって来た。彼はいつも忙がしい。一ばん親しいジョゼさえ病気を信じてくれない。クレオは今日ほど自分の孤独を感じたことはなかった。入れかわりに作曲家ボブ(ミシェル・ルグラン)がやって来た。が、陽気な彼さえも、いや誰も彼もがクレオの気持を理解してくれない。彼女は黒い服に着がえて街をさまよい歩いた。カフェでコーヒーをのみ、ジューク・ボックスでレコードを聞いてみるが淋しい。うす明りの公園はまったく人影がない。ひっそりとせせらぎの音に耳を傾けるクレオ……。突然、男の声を耳にした。軍服を着た若い男(アントワーヌ・ブルセイユ)だ。アルジェリアから休暇で帰ってきたその男は、その夜ふたたび戦線へ帰るという。クレオはこの男に親近感ををおぼえた。ともに死の可能性を近い将来に持っていることが二人の心を近づけたのだろうか。クレオは、自分がガンではないかと思っていることを話した。二人は病院までバスにのる。病院の構内。二人はばったり担当の医者に会う。宣告の一瞬。クレオはガンではなかった。二ヵ月も療養すれば治るというのだ。生きる喜びが体中にわき上った。それにクレオはもうひとりではない。今日、芽生えたこのささやかな愛が、きっと彼女の回復を早めるだろう。