「エヴァンジェリン(1929)」のストーリー

これはアメリカがまだ英国の属領であった頃の物語である。アカディー地方のグランド・プレという小村にエヴァンジェリンという娘が父親ベネディクトと住んでいた。同じ村の青年がプリエルと彼女はいつか相思の仲となり変わらぬ愛を誓い合ってついに婚約を結ぶにいたった。しかるにアメリカの諸植民地占有のことから英本国とフランスとの間に戦争が開かれようとし、アカディーの住民にも英国より出征命令が下った。だがフランスから移住した人間が多く住む某所の村では政府からの命令を拒んだためことごとく追放され、家は焼かれ、親子夫婦は生き別れとされ残酷な取り扱いを受けた。エヴァンジェリンも乗船の混雑中に病める父をいたわっていたため船に遅れ、恋人がブリエルとは離れ離れになってしまった。父に死別したエヴァンジェリンはガブリエルを探し訪ねてある時はアメリカインディアンの集落に、ある時にはミシシーピーの流域に彷徨ひ、野を越え、山を越え、漂泊の体をつずけること幾年月、運命の悪戯は彼ら2人をすぐ近くにまで引き寄せながら会はせようとはしなかった。そして彼らが再び会った時はすでに2人は年老いていた。だが生命をかけて愛し合っていた彼らは現世での再会を神に感謝したのであった。