まるで戦国版 “仁義なき戦い”! 本物志向のスタッフがこだわり抜いた、新しき戦国時代劇「信虎」

2021年秋、実に久しぶりの本格時代劇として話題となった金子修介監督作品「信虎」のブルーレイ&DVD(英語字幕付き)が12月16日にリリースされた。

こだわり抜いた美術や装飾と寺田農の名演!

この作品、製作総指揮・プロデューサー・共同監督・脚本・美術・装飾(籠尾和人と共同)・共同編集を務め、本作の運命のマスターとなった宮下玄覇のこだわりにより、衣裳(宮本まさ江)や甲冑、装飾品など、その多くが重要文化財クラスの本物を用い、また実際に登場人物がいた場所で撮影するなど、従来の時代劇制作ではおよそ成し得なかったことを果敢に実行。女性陣がみな眉剃り&お歯黒というのも久しく見なかった光景だ。かつら他担当の江川悦子は本作で文部科学大臣賞を受賞した。

こうした本物志向に裏打ちされながら、金子監督は武田信玄の父でもある本作の主人公・武田信虎の晩年の野望と、それに伴う孫・武田勝頼との確執を、あたかも戦国お家版「仁義なき戦い」とでもいったテイストで熱く描出していく。主演に大ベテラン寺田農を迎えた快挙も、とかく観客に媚びたキャスティングをしがちな昨今の日本映画界に対するアンチテーゼたり得ているが、それ以上にあたかも戦国のラスプーチンのごとき貫禄で立ち回る寺田の名演は、時代劇ファンならずとも必見、むしろ時代劇に馴染みのない若い世代にこそ多大な刺激を与えてくれることだろう。

「影武者」のスピンオフとしても楽しめる

本作は登場人物の大半が、そんな信虎の野心の犠牲となり、おびただしい血が流れていくが、それに逆らう唯一の存在として信虎のわがまま娘お直の存在が光り輝くあたりも、美少女映画の名匠・金子監督ならではの賜物だ。演じる谷村美月の終始「こんなところにはいたくない!」オーラがクライマックスで弾けるあたり、カタルシス以外の何物でもない。

また本作は金子監督曰く、黒澤明監督「影武者」スピンオフとしても成立しており(金子監督は「影武者」公開当時から擁護派であった)、それゆえに隆大介(惜しくも本作が遺作となった)を最初の見せ場の主として起用。さらには池辺晋一郎を音楽に起用し、ともに絶大な効果をもたらしてくれている。

豪華版ブルーレイの映像特典も充実

なお今回のソフト、豪華版ブルーレイの映像特典が充実しており、メイキングや完成披露試写会、初日舞台挨拶の模様などで大半のキャストのコメントが拾えているあたりが嬉しいが、その他にもカラーグレーディングの違いや、別バージョン・テイクも披露(ラストも別テイクがあった!)。しかし、もっとも際立つのはやはり主演の寺田で、達者な話術でぐいぐいと聞く者を引き込んでいくあたり、まさに信虎が現在に蘇ってきたかのようであった。

文=増當竜也 制作=キネマ旬報社

 

「信虎」
●12月16日(金)Blu-ray&DVDリリース(同日DVDレンタル開始)
▶Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

●Blu-ray:6,380円(税込) 
【映像特典(DVD)】
メイキング/舞台挨拶&トークイベント/キャストインタビューなど
(約2時間にわたるコンテンツをスペシャルディスクとして封入)
【封入特典】
作品解説書(24P)
【特典仕様】
外装スリーブケース/ピクチャーディスク

●DVD:4,180円(税込)
【映像特典】
劇場予告編

●2021年/日本/本編135分
●出演:寺田農、谷村美月、矢野聖人、荒井敦史、榎木孝明、永島敏行、渡辺裕之、隆大介、石垣佑磨、葛山信吾、嘉門タツオ、杉浦太陽、左伴彩佳(AKB48)、柏原収史
●監督:金子修介/共同監督・脚本:宮下玄覇/撮影:上野彰吾
●発売元:日活株式会社/ミヤオビピクチャーズ 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
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