“恋の光”が視える男・神尾楓珠と、西野七瀬ら演じる女子大生3人の文科系哲学恋愛映画「恋は光」

秋★枝による同名コミックを、「殺さない彼と死なない彼女」の小林啓一監督が自ら脚本も手掛けて実写化した映画「恋は光」の Blu-ray&DVDが、12月2日(金)にリリースされた。

「恋の定義」を巡って繰り広げる大論争

恋する女性が光って視える男と、恋に対する考え方も経験値も異なる3人の女子大生が、「恋の定義」を巡って大論争を繰り広げる≪文科系哲学恋愛映画≫である本作。SNSで口コミがじわじわ広がり、上映終了間際に映画館に駆け込む人が続出したことでも話題に。「気になっていたけど、劇場公開時に観逃した!」という人も多いのではないだろうか。

「恋する女性がキラキラ光って視える」という特異体質を持つがゆえ、恋愛を遠ざけてきた西条(神尾楓珠)と、小学生の頃から西条に想いを寄せながらも、「お前は光っていない」と言われてしまったために想いを打ち明けられず、いつまでたっても幼なじみポジションから抜け出せない北代(西野七瀬)。腐れ縁とも言えるこの関係性はずっと変わらぬままかと思われたが、ある日、西条が「恋というものを知りたい」と古今東西の文学作品を読み漁る東雲(平祐奈)と出会って一目惚れしたことから、思わぬ方向へと動き出す。

「恋の定義」を語り合うべく「交換日記」を開始した西条と東雲を横目に、「自分は恋を諦めている」と言いつつも、内心気が気ではない北代。そこに「人の彼氏を奪いたくなってしまう」という悪癖を持つ宿木(馬場ふみか)がやってきて、西条を北代の彼氏と勘違いして猛アプローチをかけてくる。そして西条と東雲のみならず、いつの間にやらみんなで「恋とはなんぞや?」と考え始め、やがて世にも奇妙な四角関係へと突入する。数千年もの間、人類誰しもが悩んできた「恋」の命題を、果たして彼らは解くことが出来るのか――!?

個性的で“変”なはずなのに、俳優陣の力でリアリティ溢れる魅力的なキャラに

漫画みたいな四角い銀縁の眼鏡をかけて、明治の文豪気取りで文語調で会話をする西条も、幼なじみの西条のことをなぜか「先生」と呼び、電車のなかで悪だくみしながら「フェ、フェ、フェ~!」と不敵に笑う北代も、亡き祖母のおさがりの服を身にまとい、スマホやパソコンなど文明の利器に頼ることなく一人で暮らしている浮世離れした東雲も、映画の冒頭、友だちの彼氏を略奪したせいで桃ジュースを頭にかけられても、「暑かったからちょうどよかった」と一切動じることのないふてぶてしい宿木も、ハッキリ言ってみんな変! にもかかわらず、かつて自分も同じキャンパスに通っていたかと錯覚するくらい、まったく嘘くさくなく、真実味のあるキャラクターとして普通に存在していることに、心底驚かされる。そして、普通だったら絶対に友だちにならなさそうな恋敵でもある北代・東雲・宿木の3人が、東雲の自宅でパジャマパーティーをしながら連帯している姿に、勇気をもらえるのだ。

神尾や西野の劇場公開時のインタビューに改めて目を通してみると、「西条は普段の自分とは似ても似つかない人物」「クランクインの直後はまだ完全に掴み切れていなかった」などと、現場で小林監督と共に試行錯誤しながら作り上げたキャラクターであることが語られている。だが、ひとたび映画を観ると、彼らは生まれながらに西条や北代であったかのようにしか見えず、いまもあの街に行きさえすれば、彼らとすれ違えるような気がしてならない。

小林啓一監督作品の特徴のひとつでもある光溢れる自然光で、カットを割るシーンでも多くは一連で撮影されているからなのか。果てしなく続く長ゼリフも小気味よい掛け合いも、実はストップウォッチで測りながら、細かくコントロールされているからなのか。それとも、俳優陣に備わる芝居の力とロケ地が発するパワーで、化学反応が起きているからなのか――。いやきっと、それらすべてが絶妙に折り重なって生まれたものに違いない。なかでも、西野七瀬演じる北代が劇中で見せる表情には何度も心を掴まれて、西野の女優としての潜在能力の高さに唸らずにはいられなかった。

風光明媚なロケーションが生み出す世界観に魅了され「聖地巡礼」するファンも続出

「恋は光」は、コロナ禍によるおよそ1年の延期を経て、2021年の夏にオール岡山ロケで撮影された。西条や北代は、街の中心地を行き交う路面電車に揺られ、美術館や洒落た飲食店が点在するエリアや、画廊がある商店街を歩き、夜の岡山後楽園で語り合う。モダンな建築の校舎が印象的な大学構内や、川沿いに柳並木と白壁の蔵が立ち並ぶ、倉敷美観地区。レトロなボンネットバスが走る吹屋ふるさと村など、風光明媚な岡山のロケーションもこの物語を演出するのに一役買っている。「聖地巡り」と称してロケ地を訪ね、西条や北代らと同じポーズで写真を撮りインスタグラムにアップする熱烈なファンが多いのもうなづける。

特典として収録されているメイキング映像やオーディオコメンタリー(神尾楓珠×小林啓一監督×中井圭と、西野七瀬×平祐奈×馬場ふみか×小林啓一監督×中井圭の2バージョンあり)に耳を傾けてみると、映画冒頭で宿木が桃のジュースをかぶるシーンの撮影時に、ベタベタになった馬場が5回もシャワーを浴びたこと。西条の眼鏡は神尾の視力に合わせた度入りで、眼鏡を押し上げるタイミングも細かく決められていたこと。東雲のキャラクター像は、ジブリ映画に登場するヒロインを意識していること。さらには、普段はコンタクトレンズの北代がときどき眼鏡をかけている切ない理由まで……! ファンにはたまらない裏話が満載で、特典をチェックした上で何度も見たくなること請け合いだ。本作の肝とも言えるキラキラ光るCGの制作秘話や、音楽、美術、衣裳など数々のこだわりも見逃せない。

劇中の「恋の定義」を巡る彼らの議論は尽きないが、映画のオープニングに掲げられるシーロウ・キーターによる格言「恋とは、誰しもが語れるが誰しもが正しく語れないものである――」が、すべてを言い当てているように思えてならない。エンディングで本作のタイトルが西条の口から発せられるとき、それを受け止める笑顔のまばゆさに胸がいっぱいになる。

文=渡邊玲子 制作=キネマ旬報社

 

「恋は光」
●12月2日(金)Blu-ray&DVDリリース(DVDレンタル中)
▶Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

●Blu-ray:6,600円(税込) DVD:5,500円(税込)
[本編ディスク](約2分)
・予告集
[特典ディスク](約100分)
・メイキング
・イベント映像集
(完成披露試写会舞台挨拶、公開直前!大ヒット祈願イベント、スペシャル座談会、公開記念舞台挨拶)
【音声特典】
・本編オーディオコメンタリー
①神尾楓珠×小林啓一監督×中井圭(映画解説者)
②西野七瀬×平祐奈×馬場ふみか×小林啓一監督×中井圭(映画解説者)
※特典ディスクはDVDとなります
※「スペシャル座談会」は劇場公開時に配信された映像を再編集したものです。

●2022年/日本/本編111分
●出演:神尾楓珠、西野七瀬、平祐奈、馬場ふみか、伊東蒼、宮下咲
●脚本・監督:小林啓一
●原作:秋★枝「恋は光」(集英社ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ刊)
●発売元:株式会社ハピネットファントム・スタジオ 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©秋★枝/集英社・2022 映画「恋は光」製作委員会

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