諏訪敦彦 スワノブヒロ

  • 出身地:広島県広島市
  • 生年月日:1960/05/28

略歴 / Brief history

【フランスで高い評価を受ける即興演出のアーティスト】広島県広島市の生まれ。かわなかのぶひろの影響で、1979年、東京造形大学デザイン学科に入学。山本政志の8ミリ「聖テロリズム」に助監督として参加したのを皮切りに、長崎俊一、石井聰亙、山川直人、松井良彦らの作品に多数参加する。自らも16ミリ「サンタが街にやって来る」(82)を監督し、85年の8ミリ「はなされるGANG」でPFFに入選。その後はテレビドキュメンタリーの演出などを手がけ、95年の『ハリウッドを駆けた怪優/異端の人・上山草人』の独創的な構成・演出が高く評価された。97年、美術監督・磯貝俊裕のプロデュースによる「2/デュオ」で、本格的な劇場映画デビューを果たす。若いカップルの心のすれ違いを描いたこの作品から、すでにシナリオなしの即興演出というスタイルを確立し、国内以上に海外で注目を集めた。続く「M/OTHER」(99)は、子供を預かることになった同棲カップルの揺れ動く心情を描き、カンヌ映画祭で国際批評家連盟賞を獲得する。2001年には、アラン・レネの名作「二十四時間の情事」をリメイクした「Hstory」を発表(日本公開は03年)。主演にフランス人女優のベアトリス・ダル、撮影監督にジャン=リュック・ゴダールとのコンビで知られるキャロリーヌ・シャンプティエを起用し、本番とメイキングを1台のカメラに収めるという実験を試みた。次いで手がけた「不完全なふたり」(07)も、パリを舞台にフランス人のスタッフ・キャストで撮った日仏合作映画で、ロカルノ国際映画祭の審査員特別賞を受賞している。09年の「ユキとニナ」は、オムニバス「パリ・ジュテーム」(07)で起用した俳優イポリット・ジラルドとの共同監督作。演技経験のない9歳の女の子を主演に、親の離婚を乗り越えていく子供の友情と成長を繊細なタッチで描出した。【シナリオなしの実験的な映画づくり】80年代前半を自主映画運動が盛り上がる中で過ごしたが、そこから商業映画への道には進まず、個人映画、実験映画的な作風を貫いて、海外で評価されることで作家としての立ち位置を確立した。実質的な監督デビュー作「2/デュオ」以降は、明確なシナリオをあらかじめ用意せず、役者とのディスカッションにもとづく即興演出という独特のスタイルでの映画作りを続けている。毎日映画コンクールで脚本賞を受賞した「M/OTHER」では、諏訪とともに主演の三浦友和と渡辺真起子が脚本に名を連ねているが、これは三者の話し合いにより構成台本が作られたからだという。従来の映画製作の手法から大きく離れた実験的な精神で、アート系映画を放ち続ける異色の存在。フランスを拠点とするインターナショナルなタッグが続いているが、その一方で02年から母校の東京造形大学で教授をつとめ、08年には学長に就任している。

諏訪敦彦の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 走れない人の走り方

    制作年: 2023
    短編「豚とふたりのコインランドリー」でPFFアワード2021(第43回)審査員特別賞を獲得した蘇鈺淳監督の長編デビュー作となる人間ドラマ。ロードムービーを撮ろうとする映画監督の小島桐子だったが、様々なトラブルが起き理想と現実が乖離し、ある選択をする。蘇鈺淳監督は台湾で映像を学んだ後、東京藝術大学大学院映像研究科に留学。出演は、「猫は逃げた」の山本奈衣瑠ほか。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻17期生修了上映会『S#17』上映作品。2024年第19回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門出品作品。
  • ONODA 一万夜を越えて

    制作年: 2021
    太平洋戦争後、約30年目に生還した小野田旧陸軍少尉をめぐる実話を基に「汚れたダイヤモンド」のアルチュール・アラリ監督が映画化。任務解除の命令を受けられないまま、フィリピン・ルバング島で、孤独と対峙しながら生き続けた日本人の壮絶な日々を映し出す。出演は「空母いぶき」の遠藤雄弥、「HOKUSAI」の津田寛治、「すばらしき世界」の仲野太賀。
  • 風の電話

    制作年: 2020
    岩手県大槌町に実在する電話ボックス“風の電話”をモチーフにしたヒューマンドラマ。大槌町で東日本大震災に遭い、家族を失った高校生のハルは、広島県に住む叔母の家に身を寄せている。ある日、叔母が倒れ、病院へ運ばれると、ハルは故郷を目指し旅に出る。監督は、「ライオンは今夜死ぬ」の諏訪敦彦。出演は、「ブラック校則」のモトーラ世理奈、「空母いぶき」の西島秀俊、「任侠学園」の西田敏行、「羊と鋼の森」の三浦友和。
  • そこにあるもの

      制作年: 2010
      東京都青梅市にある盲養護老人ホーム聖明園曙荘で生活する人々に密着したドキュメンタリー。先天盲や後天性失明、ロービジョン者の方ら約100名が暮らす聖明園曙荘での日常や、人と人とのふれあいにフォーカスを合わせ、見えないとはどういうことか考える。監督は「モラトリアム」の澤佳一郎。映画美学校ドキュメンタリー科修了制作として制作された本作は、映画美学校セレクションに選出された。音声ガイドを「カメラを止めるな!」のしゅはまはるみが担当する。
    • ライオンは今夜死ぬ

      制作年: 2017
      ヌーヴェルヴァーグを代表する名優ジャン=ピエール・レオを主演に迎え、諏訪敦彦監督が「ユキとニナ」以来8年ぶりに撮り上げた人間ドラマ。老優ジャンは、昔愛した女性を訪ねて古い屋敷にたどり着くが、そこで映画撮影ごっこをする地元の子どもたちと出会う。共演は「ジュリーと恋と靴工場」のポーリン・エチエンヌ、「ことの次第」のイザベル・ヴェンガルテン。
    • 家路(2014)

      制作年: 2014
      震災後の福島を舞台に、家族の再生を描く人間ドラマ。監督は、テレビドキュメンタリー出身で劇映画デビュー作となる久保田直。脚本は、「いつか読書する日」の青木研次。出演は、「GANTZ」シリーズの松山ケンイチ、「臨場 劇場版」の内田聖陽、「はじまりのみち」の田中裕子、「今日子と修一の場合」の安藤サクラ。

    今日は映画何の日?

    注目記事