藤竜也 フジタツヤ

  • 出身地:中国・北京
  • 生年月日:1941/08/27

略歴 / Brief history

中国・北京で生まれ、神奈川県横浜市で育つ。本名・伊藤龍也。日本大学芸術学部演劇科在学中の1962年、街頭で日活のスカウトに誘われ、大学を中退して日活に入社。同年10月公開の「望郷の海」で俳優デビューする。以後、「若い旋風」「若いふたり」62、11本目で新人の肩書きのついた「狼の王子」63、「仲間たち」「黒い太陽」「黒い海峡」64、「城取り」「賭場の牝猫」「ぼくどうして涙がでるの」65、「哀愁の夜」「夜霧の慕情」66など多数に出演するが、いずれも軽い役ばかり。出世作となったのは、渡哲也扮するドラマーの弟役を演じた井上梅次監督「嵐を呼ぶ男」66で、これが38本目の出演作だった。67年には「嵐来たり去る」の石原裕次郎に挑む家出青年、「みな殺しの拳銃」の宍戸錠のやくざな弟、「紅の流れ星」の渡哲也を射殺する刑事など主演に絡む役が多くなり、次第に頭角を現しはじめる。翌68年、「青春の嵐」「娘の季節」などの青春映画に助演する一方、集団抗争劇の端緒となった「縄張(シマ)はもらった」で小林旭、宍戸錠と共演。リンチされても仲間を裏切らずに死亡するやくざ役で強い印象を残した。さらに69年、「野獣を消せ」で主人公の渡哲也と敵対するチンピラ集団のエキセントリックなリーダーを演じて、主人公の存在を霞ませるほどの強烈な個性を発揮する。続く「広域暴力・流血の縄張(シマ)」ではいつもサングラスをかけて猫を抱いている無口なやくざだが、警察に保護されている敵を刺しにいくという儲け役を圧倒的な存在感で演じきった。70年、日活のロマンポルノへの路線変更直前に生まれた日活ニュー・アクションの時代には、原田芳雄、梶芽衣子とともに中核として活躍。女番長グループを中心に若者たちの屈折したエネルギーが爆発する「野良猫ロック」シリーズ70~71に出演するほか、自滅していくチンピラを生き生きと演じた「斬り込み」「反逆のメロディー」「流血の抗争」70で存在感を発揮した。その間の68年8月に日活の同僚の女優・芦川いづみと結婚。日活アクション映画崩壊後はフリーになり、主に東映のアクション映画に出演していたが、74年、彼自身の語り入りのヒット歌謡曲『花一輪』を映画化した「任俠花一輪」に主演し、話題となる。やがて、映画のイメージをテレビドラマに押し込んだTBS『時間ですよ』における謎の男・風間役で、お茶の間でも人気に火が点く。フランス映画として公開された大島渚監督「愛のコリーダ」76の吉蔵役では、ヒロイン・定に扮した松田英子と撮影で実際にセックスする難役に挑み、世界的に賞賛されるが、日本国内では性交場面や性器描写は修正されて公開された。続いての大島監督とのコンビ作「愛の亡霊」78では、愛のために殺人を犯す戦争帰りの若者を好演。演技者としてのピークを迎える。一方、テレビドラマ出演も多く、日本テレビ『大追跡』78、『プロハンター』81、テレビ朝日『特命刑事ザ・コップ』85、『ベイシティ刑事』87、『裏刑事』92など、主に刑事アクションを中心にして、活劇スターとしての地位をテレビでも築く。映画ではその後も、相米慎二監督「ションベン・ライダー」83、崔洋一監督「友よ、静かに瞑れ」85、森﨑東監督「塀の中の懲りない面々」87、村川透監督「行き止まりの挽歌・ブレイクアウト」88などを経て、渋い中年から初老の役をこなすようになり、黒沢清監督「アカルイミライ」03、羽住英一郎監督「海猿」04などで好演。2004年の三原光尋監督「山の写真集」では、ダム建設で水没しようとしている山村の風景を写真で記録する頑固一徹の村の写真家を演じて、上海国際映画祭の最優秀男優賞を受賞している。テレビドラマはほかに、TBS『離婚ともだち』80、『もういちど結婚』83、『催眠』00、テレビ朝日『高円寺純情商店街』90、『長崎ぶらぶら節』01、フジテレビ『恋はあせらず』『大丈夫です、友よ』98、NHK『北条時宗』01、『風子のラーメン』03、『風のハルカ』05、『10年先も君に恋して』10、TBS『汚れた舌』05など多数。

藤竜也の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 高野豆腐店の春

    制作年: 2023
    尾道を舞台に、昔ながらの小さな豆腐店を営む父と娘の心の機微を綴るヒューマンドラマ。職人気質な高野辰雄と娘・春の二人三脚で、こだわりの大豆から豆腐を作る毎日。常連さんや仲間たちとの和やかな時間を過ごすふたりだったが、それぞれに新しい出会いが訪れる。出演は「龍三と七人の子分たち」の藤竜也、「モテキ」の麻生久美子、「風に立つライオン」の中村久美。監督は「村の写真集」「しあわせのかおり」に続き、藤竜也と3度目のタッグを組む三原光尋。
  • それいけ!ゲートボールさくら組

    制作年: 2023
    「愛のコリーダ」「龍三と七人の子分たち」などの藤竜也主演によるスポ根人情コメディ。高校時代、ラグビーで青春を謳歌していた76歳の織田桃次郎。久々に再会した友の窮地を救うため、かつての仲間たちとゲートボールのチームを結成して勝利を目指すのだが……。共演は「つむぐもの」の石倉三郎、「セーラー服と機関銃(1981)」の大門正明、『ウルトラセブン』の森次晃嗣。監督は「紫 MURASAKI 伝説のロック・スピリッツ」の野田孝則。
  • 愛のコリーダ 修復版

    制作年: 1976
    アートかエロスか? 松田英子、藤竜也がセックスと愛の極限を表現! 愛憎の果てに男性器を切り取るという昭和の日本を震撼させた「阿部定事件」を、大胆な性描写と圧倒的映像美で描き切った大島渚監督史上最大の 問題作が2Kデジタル修復版で蘇る。「夜と霧」などで知られるフランスのプロデューサー、アナトール・ドーマンから「ポルノを」と誘われた大島は、題材に阿部定を選び、ハードコアで作る構想にたどり着く。日本側のプロデューサーには若松孝二が迎えられた。検閲を逃れるため、日本で撮影されたネガフィルムを未現像のままフランスに送って編集し、日本に逆輸入して上映するという執念で作品を完成させる。1976年カンヌ国際映画祭で世界初上映され大絶賛を浴びるが、日本公開に際しては、税関検閲の段階でズタズタにされ、性描写などに多くの修正と一部のシーンカットがなされた。また、作品のシナリオと写真を掲載した書籍『愛のコリーダ』が三一書房から刊行されたが、その一部がわいせつ文書図画に当たるとして、東京地検はわいせつ物頒布罪で大島と出版社社長を起訴する。裁判で大島は「芸術か、わいせつか」ではなく「わいせつ、なぜ悪い」の論点で戦い、1979年東京地裁で無罪、1982年東京高裁の控訴審でも無罪を勝ち取った。2000年のリバイバル上映では、オリジナルプリントを新たにフランスから取り寄せ、本篇プリントはノーカットで、税関・映倫の精査によるボカシという修正のみで「愛のコリーダ2000」として公開された。今回は、ブラー処理、色調整、レストア作業などをほどこし、全面的に修正が行われ、初のデジタル素材となって全国公開される。
  • コンプリシティ/優しい共犯

    制作年: 2018
    技能実習生や不法滞在外国人などの社会問題を背景に、1人の若者の生き様を描くドラマ。中国から技能実習生として来日しながらも、研修先企業から失踪し、不法滞在者となったチェン・リャンは、やがて山形の小さな蕎麦屋で住み込みの仕事を見つけるが……。出演は「雀 我が家の風景」のルー・ユーライ、「台風家族」の藤竜也。監督の近浦啓はこれが長編デビュー作ながら、東京フィルメックス観客賞を受賞した他、トロント国際映画祭や釜山国際映画祭などに出品され、高評価を得ている。
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  • 台風家族

    制作年: 2019
    「箱入り息子の恋」の市井昌秀が“両親への想い”をヒントに創作したヒューマンドラマ。老人が銀行で2000万円を強盗し、霊柩車で妻と共に行方をくらました事件があった。10年後、その子どもたちが実家に集まり、財産分与のために見せかけの葬儀を行う。出演は、「まく子」の草彅剛、「アイネクライネナハトムジーク」のMEGUMI、「長いお別れ」の中村倫也、「素敵なダイナマイトスキャンダル」の尾野真千子、「愛がなんだ」の若葉竜也。
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  • 空母いぶき

    制作年: 2019
    かわぐちかいじの同名コミックを「沈まぬ太陽」の若松節朗監督が映画化。20XX年、日本領土である波留間群島の一部が謎の武装集団に占領された。自衛隊初の航空機搭載型護衛艦《いぶき》が出動するが、敵のミサイル攻撃を受け、想定を超えた戦闘状態に突入する。出演は「散り椿」の西島秀俊、「嘘八百」の佐々木蔵之介。脚本は「機動警察パトレイバー」シリーズの伊藤和典と「亡国のイージス」の長谷川康夫。
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