タナダユキ タナダユキ

  • 出身地:福岡県北九州市
  • 生年月日:1975/08/12

略歴 / Brief history

【しなやかな感性で女性心理を浮き彫りにする若き才媛】福岡県北九州市の生まれ。本名・棚田入月。地元の高校で演劇を学んだのち、上京してイメージフォーラム附属映像研究所に入学。2000年に自ら監督・脚本・主演をつとめた自主映画「モル」を製作した。この作品でPFFアワード01のグランプリを獲得。期待の新人女性監督として注目を集め、「モル」はデジタルビデオ制作の自主映画ながら01年に劇場公開、そのまま監督デビューとなった。某作メイキング担当の縁で撮った監督第2作は、伝説のフォークシンガー、高田渡の姿を追う記録映画「タカダワタル的」(04)。フォーク全盛期を知らない世代のタナダが、知らないがゆえの軽やかさで、高田のマイペースな音楽活動を綴った。ロングランヒットとなった同作と同じ年には、若手監督6人が集った「ラブコレクション」シリーズの一作「月とチェリー」も公開。その後、18人のクリエイターたちが参加した短編オムニバス「ハヴァ・ナイスデー」(06)の一編「世田谷リンダちゃん」や、ミュージックビデオ等の演出を経て、07年に松田洋子の同名コミックを映画化した「赤い文化住宅の初子」を監督する。同年には写真家・蜷川実花の初監督作「さくらん」の脚本も手がけ、折しも高まった女性監督台頭の機運に乗ってタナダ自身も脚光を浴びた。続く自身のオリジナル脚本による「百万円と苦虫女」(08)では日本映画監督協会新人賞を受賞。同作で蒼井優が演じたヒロイン・鈴子を再び登場させたWOWOWドラマ『蒼井優×4つの嘘/カムフラージュ』の中の一編『都民・鈴子/百万円と苦虫女・序章』(08)も手がける。この年にはもう1本、さそうあきらの人気コミックが原作の青春映画「俺たちに明日はないッス」も監督。順調にそのキャリアを積み重ねている。【等身大に世界と対峙する若者たち】映画学校を経て自主映画がPFFで評価され、そのまま劇場デビューを果たすという2000年代の多くの自主映画出身者がたどった道を通って才能をアピールした新世代作家。女性監督が多く台頭し注目を集めた時期とも重なって、映画、テレビドラマ、ミュージックビデオなど、さまざまな映像ジャンルを手がけて頭角を現した。タナダ作品では原作もの・オリジナル作品を問わず常に、思春期から青年期にかけての人物が、生理的な感性を通した社会との齟齬を抱え生きている。生理日になると自殺者と目が合い高熱を出す「モル」、極貧の生活で同級生と距離感を持つ「赤い文化住宅の初子」、人間関係が構築される時期に街を逃げ出す「百万円と苦虫女」。これらの女性が手探りで世界と向き合おうとする過程をしなやかに描き出す。デビュー作から連続して女性を主人公に据えたため、女子が社会と対峙する映画作家ともみられたが、「俺たちに明日はないッス」では「月とチェリー」の発展形として童貞喪失により世界突破を企む少年たちを描き、その世界観を拡大させた。

タナダユキの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • マイ・ブロークン・マリコ

    制作年: 2022
    平庫ワカによる同名漫画を「浜の朝日の嘘つきどもと」のタナダユキ監督、「そして、バトンは渡された」の永野芽郁主演で実写化。鬱屈した日々を送るOLシイノトモヨは、親友のイカガワマリコが亡くなったことを知り、マリコの魂を救うために遺骨を強奪し逃走する。共演は「君は永遠にそいつらより若い」の奈緒、「初恋」の窪田正孝、「とんび」の尾美としのり、「ハナレイ・ベイ」の吉田羊。
  • 浜の朝日の嘘つきどもと

    制作年: 2021
    タナダユキ監督が、福島県南相馬に実在する映画館「朝日座」を舞台に、映画に人生を救われた女性が、映画を教えてくれた恩師との約束を果たすために、支配人や町の人々を巻き込みながら映画館を守ろうと奮闘する姿を描く。福島中央テレビ開局50周年記念作品。主人公の浜野あさひ/茂木莉子(もぎりこ)を演じるのは高畑充希、恩師の田中茉莉子役にバラエティで活躍する大久保佳代子、朝日座の支配人・森田保造に落語家の柳家喬太郎と異色の顔合わせが実現。丁々発止の会話が小気味よく展開する。茂木莉子と森田の掛け合いに、「キッズ・リターン」(96年/北野武監督)を彷彿とさせる「バカヤロー!まだ始まっちゃいねーよ」というセリフが出てきたり、教師の田中が失恋するたびに、「喜劇 女の泣きどころ」(75年/瀬川昌治監督)を見ていたり、映画好きにはたまらない仕掛けが随所にちりばめられている。大震災・福島の原発事故から10年、映画館を取り巻く状況はコロナ禍でさらに厳しさを増すなか、エンターテイメント文化へのエールが込められた作品が誕生した。なお、本作は福島中央テレビ50周年記念ドラマ『浜の朝日の嘘つきどもと』の前日譚ともなっており、ドラマに出演していた竹原ピストル、六平直政、吉行和子なども出演している。
  • ロマンスドール

    制作年: 2019
    「ふがいない僕は空を見た」のタナダユキ監督が、自身初のオリジナル小説を自ら映画化したラブストーリー。一人のラブドール職人と、彼が一目で恋に落ち結婚した妻が強く惹かれ合い、すれ違い、もがきながらも夫婦として本当の幸せを見つけていく姿を紡ぎ出す。出演は「空飛ぶタイヤ」の高橋一生、「彼女がその名を知らない鳥たち」の蒼井優、「体操しようよ」のきたろう、「Shall We ダンス?」の渡辺えり。
    100
  • お父さんと伊藤さん

    制作年: 2016
    中澤日菜子の同名小説を「ロマンス」のタナダユキが映画化。自由気ままに暮らす34歳の彩は、給食センターでアルバイトをしているバツイチの伊藤さんと狭いボロアパートで同棲中。そんなある日、息子夫婦の家を追い出された彩のお父さんが突然転がり込んでくる。出演は「陽だまりの彼女」の上野樹里、「シェル・コレクター」のリリー・フランキー、「龍三と七人の子分たち」の藤竜也。脚本は「四十九日のレシピ」の黒沢久子。
    70
  • ロマンス(2015)

    制作年: 2015
    新宿-箱根間を走る特急ロマンスカーのアテンダントとして働く女性が、中年の映画プロデューサーとの旅を通じて人生を見つめ直す姿を描いたドラマ。出演は「紙の月」の大島優子、「陽だまりの彼女」の大倉孝二。監督は「四十九日のレシピ」のタナダユキ。小田急全面協力の下、小田原城や大涌谷など、箱根の名所が登場する。
    62
  • 四十九日のレシピ

    制作年: 2013
    伊吹有喜の同名小説を「ふがいない僕は空を見た」のタナダユキ監督が映画化。愛妻であり母である女性を失った父と娘が、遺言に従って四十九日の宴会を開催する過程を通じて、人生を見つめ直してゆく。出演は「八日目の蝉」の永作博美、「脳男」の石橋蓮司、「地獄でなぜ悪い」の二階堂ふみ、「宇宙兄弟」の岡田将生。