ポール・トーマス・アンダーソン ポールトーマスアンダーソン

  • 出身地:カリフォルニア
  • 生年月日:1970/06/24

略歴 / Brief history

【アルトマンの後継者とも呼ばれる鮮烈な群像劇の才人】アメリカ、カリフォルニアの生まれ。父親はアナウンサー兼俳優。サン・フェルナンド・ヴァレイで育ち、高校生の頃から自主映画の製作を始める。ニューヨーク大学に入学するもののすぐに退学。ロサンゼルスとニューヨークでテレビ番組、ミュージックビデオなどの製作助手として働き始める。監督した短編「シガレッツ&コーヒー」(92)がサンダンス映画祭で注目されたことからチャンスを掴み、初の長編「ハードエイト」(96)を完成させる。次いで、高校時代に作った短編をふくらませた内容でポルノ映画業界の内幕を描いた「ブギーナイツ」(97)が批評的にも興行的にも大成功し、第一線に躍り出る。続いて発表した群像劇「マグノリア」(99)も、助演男優賞(トム・クルーズ)ほか3部門でアカデミー賞にノミネートされるなど成功を収める。2002年の「パンチドランク・ラブ」は、コメディ専門の俳優だと考えられていたアダム・サンドラーから鋭い個性を引き出し批評家たちからは好評だったものの、興行的には失敗作となった。しかし、シンクレア・ルイスの小説に基づいた次作「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(07)は興行的に成功を収めるとともに、主演のダニエル・デイ=ルイスにアカデミー主演男優賞をもたらすなど批評的にも大成功となり、アメリカを代表する若手監督としてアンダーソンの地位を盤石なものとした。【“VCR世代”も騎手として】自主映画等の経験を経て製作した短編をきっかけに、サンダンス映画祭で注目されて監督デビューを果たした新世代作家のひとり。当時80歳だったロバート・アルトマンが「今宵、フィツジェラルド劇場で」(06)を完成させられなかった場合の保険として、アンダーソンが交代の監督として控えていた(アルトマンは「今宵~」を完成させたが、これが彼の遺作となった)というエピソードからもわかるように、「ブギーナイツ」や「マグノリア」のように多数の登場人物を手際よく捌きながら皮肉とユーモアと共感を込めて描くアンダーソンは、しばしばアルトマンの後継者として語られる。自身もアルトマンからの影響を認めているが、ケヴィン・スミス、リチャード・リンクレーター、そしてクエンティン・タランティーノらとともに“VCR世代”(映画界での下働きや映画学校によってではなく、ビデオで浴びるように映画を観ることによって映画作りを学んだ映画作家)のひとりであるアンダーソンは、特定の映画作家ではなく、あらゆる作家のあらゆる技法を吸収する中で自らのスタイルを作り上げてきた。特に長回しを多用することで知られ、お気に入りの俳優を繰り返し起用し、長いワンショットによって彼らの生々しい感情を引き出すことに長けている。強烈な個性の人物が主人公の場合でも、個人を描くというよりも周囲の人物たちとの関係性に作品の重点が置かれる傾向がある。

ポール・トーマス・アンダーソンの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • リコリス・ピザ

    制作年: 2021
    「ファントム・スレッド」のポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作。1970年のアメリカのカリフォルニア州サンフェルナンド・バレーを舞台に、運命的に出会ったアラナとゲイリーの恋の痛みや喜びを、当時の音楽やファッションを完全に再現して贈る青春映画。2022年・第94回アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされたほか、世界中の映画賞に輝いた。主演は三姉妹バンド、ハイムの三女アラナ・ハイムとポール・トーマス・アンダーソン監督の盟友フィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー・ホフマン。ともに本作で鮮烈な映画デビューを飾った。そのほか、ショーン・ペン、トム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパー、ベニー・サフディが共演。監督とは本作で5作目のタッグとなるレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドが音楽を担当し、劇伴のほか計38曲の楽曲が全編を彩る。「リコリス・ピザ」は1970年代に南カリフォルニアで展開していた独立系レコード・ショップ・チェーンの名称。映画の中ではその店は登場せず、「リコリス・ピザ」という言葉さえ発せられないが、タイトルが示唆するように全編にわたって音楽が効果的に使用され、当時のポール・マッカートニー、ドアーズなどによる名曲がぎっしりと詰め込まれている。2022年第96回キネマ旬報ベスト・テン外国映画第1位作品。
  • ファントム・スレッド

    制作年: 2017
    「リンカーン」などで3度のアカデミー賞主演男優賞に輝いたダニエル・デイ・=ルイス主演のラブストーリー。1950年代のロンドン。ファッションの中心的存在として脚光を浴びるオートクチュールの仕立屋レイノルズは、若いウェイトレス、アルマと出会う。監督・脚本は、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のポール・トーマス・アンダーソン。出演は、「マルクス・エンゲルス」のヴィッキー・クリープス、「ターナー、光に愛を求めて」のレスリー・マンヴィル。音楽は、「インヒアレント・ヴァイス」のジョニー・グリーンウッド。第75回ゴールデングローブ賞2部門ノミネート。第90回アカデミー賞で作品賞を含む6部門にノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞。
    70
  • JUNUN

      制作年: 2015
      ロックバンド“レディオヘッド”のギタリスト、ジョニー・グリーンウッドが、インドで実施した現地音楽家とのコラボレーションの模様を収めた音楽ドキュメンタリー。監督は「インヒアレント・ヴァイス」などでコンビを組むポール・トーマス・アンダーソン。西洋と南アジアの才能が出会って生まれた音楽からは、熱情に溢れたパワーが伝わってくる。
    • ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男

      制作年: 2014
      「M★A★S★H マッシュ」、「ナッシュビル」など、数々の名作を世に送り出したアメリカ・インディペンデント映画の父、ロバート・アルトマン監督の実像に迫るドキュメンタリー。ポール・トーマス・アンダーソンやジュリアン・ムーアを始めとした関係者の証言に、貴重なアーカイブ映像を交えて、その素顔が明かされてゆく。
    • インヒアレント・ヴァイス

      制作年: 2014
      トマス・ピンチョンのベストセラー小説『LAヴァイス』を「ザ・マスター」のポール・トーマス・アンダーソンが映画化。1970年代を舞台に、マリファナ中毒の私立探偵が元恋人の依頼を受けたことから、巨大な陰謀に巻き込まれていく姿を描く。出演は「ザ・マスター」のホアキン・フェニックス、「ミルク」のジョシュ・ブローリン、「ミッドナイト・イン・パリ」のオーウェン・ウィルソン。撮影は「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のロバート・エルスウィット。
      70

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