犬童一心 イヌドウイッシン

  • 出身地:東京都
  • 生年月日:1960/06/24

略歴 / Brief history

【しなやかな眼差しで人生と青春を見つめる俊英】東京都生まれ。中学生の頃から学校帰りに名画座に寄り、テレビの演芸番組を楽しむ少年だった。黒沢清や大森一樹の8ミリ作品に触発され自主製作を始める。1979年、高校在学中の短編第1作「気分を変えて?」がPFFに入選。東京造形大学デザイン学科時代には池袋文芸坐の支援企画で自主作品を監督、同大卒業後に朝日プロモーション(現ADKアーツ)に入社する。CMやプロモーションビデオなどの企画・演出を手がけ、CMでの受賞歴は多数。この間も継続して自主製作を続ける。93年、山村浩二のアニメーションと実写を組み合わせた短編「金魚の一生」がキリン・コンテンポラリー・アワード最優秀作品賞を受賞。キリンビールの資金援助を得て95年、大阪を舞台に女性漫才コンビの関係を描く「二人が喋ってる。」を監督し、96年のサンダンス・フィルム・フェスティバルin東京でグランプリ、日本映画監督協会新人賞を獲得したのち、97年に劇場公開される。同作を高く評価した市川準に乞われ、「大阪物語」(99)の脚本を執筆。以後の脚本参加作も多数ある。2000年、池脇千鶴の主演で大島弓子原作の「金髪の草原」を映画化、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリを受賞した。以降、しばらくはCMやテレビシリーズ『伝説のワニ・ジェイク』(02年に劇場公開)などを手がける。03年、池脇と妻夫木聡主演の「ジョゼと虎と魚たち」がヒットし、劇場映画監督としての活動が本格的になる。「死に花」(04)は東映配給の初メジャー作品。以降、「メゾン・ド・ヒミコ」(05)、「眉山」(07)、「グーグーだって猫である」(08)、「ゼロの焦点」(09)などコンスタントに良質の作品を発表している。【生き方と死を考察する一貫した作風】大林宣彦の系譜を継ぐCM出身監督であり、脈々と続けた自主映画作品の評価が監督デビューにつながった自主映画出身の色が強い。犬童作品の主要人物は、時にはシニカルな毒気を孕みつつ凜とした清潔さを帯びている。社会の激しい変化から外れた者の心象に思いを向ける作風によるものだが、そこにあるのは弱者へのシンパシーではなく、大きな力を必要としない生き方を選ぶ人への憧憬である。それゆえ金魚、犬、猫といった動物も、自分の律に従って生きる者として同格に尊重される。もうひとつの重要なモチーフは死。死者を言葉通り先に行き、生ある人を見守る者と捉える姿勢はしばしばファンタジーの形を取るが、喪失の思いに敏感な描写によって生への励ましに結実する。こうした人生観照スタイルの瑞々しさがインディーズからメジャーへと場を移し、人気俳優の演出機会を増やした。

犬童一心の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • ハウ

    制作年: 2022
    「ナミヤ雑貨店の奇蹟」などの脚本家・斉藤ひろしによる小説を原作に、「引っ越し大名!」の犬童一心監督が映画化。婚約者に別れを告げられた市役所職員・赤西民夫。空虚な日々を送る彼だったが、真っ白な保護犬ハウと出会い、いつしかかけがえのない存在となっていく。出演は「女子高生に殺されたい」の田中圭、「真夜中乙女戦争」の池田エライザ。
  • 名付けようのない踊り

    制作年: 2021
    1966年にソロダンスをスタート、1978 年にパリで海外デビューを果たして以来、世界中でダンスを披露してきた田中泯。その公演歴は76歳となる現在までに3000 回を超える。そのどんなジャンルにも属さない田中泯の<場踊り>と人生哲学に迫ったドキュメンタリー。2002年の「たそがれ清兵衛」の出演を機に「メゾン・ド・ヒミコ」(05)へとつながり、親交を深めてきた犬童一心監督が、2017年8月から2019年11月まで、ポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛などを巡りながら撮影した。田中が40歳の時に「野良仕事」で身体を作ると決心して開墾した富士山麓の暮らしも収められている。田中自身が「私のこども」と呼ぶ子供時代の記憶を、「頭山」でアカデミー賞にノミネートされた山村浩二がアニメーションとして表現。田中泯の著書などから犬童が脚本を書き、田中自身が行ったナレーションが<踊り>と一体化して、映画そのものに心地よいリズムを与えている。
  • 夢を与える

    制作年: 2015
    芥川賞作家・綿矢りさの同名小説を「のぼうの城」の犬童一心の監督で映像化した2015年のWOWOW連続ドラマを劇場上映。幹子は幼い娘・夕子をオーディションに参加させ、夕子は芸能界入り。数年後、夕子は大手事務所に移籍し幹子の念願通りブレイクするが……。美しく健やかに育った夕子を小松菜奈が、彼女に過剰な思い入れを持つ母親・幹子を菊地凛子が演じ、スキャンダラスな人間ドラマを紡いだ。劇場では全4話をA(1~2話)、B(3~4話)に分けて上映
  • 海辺の映画館 キネマの玉手箱

    制作年: 2019
    大林宣彦監督が20年ぶりに出身地である広島県尾道でメインロケを敢行、戦争や映画の歴史を辿るファンタジー劇。尾道の海辺にある映画館が閉館の日を迎え、日本の戦争映画大特集のオールナイト興行を見ていた3人の若者がスクリーンの世界へタイムリープする。大林作品に多数出演する厚木拓郎と細山田隆人、「武蔵 -むさし-」に主演した細田善彦が銀幕の世界にタイムリープし移動劇団『桜隊』の運命を変えようとする3人の若者を、『桜隊』の看板女優を「野のなななのか」「花筐/HANAGATAMI」と近年の大林作品を支える常盤貴子が演じる。第32回東京国際映画祭Japan Now部門にてワールドプレミア上映、大林監督に特別功労賞が授与された。
    89
  • 最高の人生の見つけ方(2019)

    制作年: 2019
    同名ハリウッド映画を「北の桜守」の吉永小百合と「恋妻家宮本」の天海祐希主演でリメイクしたヒューマンドラマ。余命宣告を受けた主婦の幸枝と女社長のマ子は、たまたま手にした同じ病院に入院する少女の“死ぬまでにやりたいことリスト”を実行することに。監督は、「猫は抱くもの」の犬童一心。
    94
  • 引っ越し大名!

    制作年: 2019
    「超高速!参勤交代」の脚本・小説版を手がけた土橋章宏による時代小説『引っ越し大名三千里』を映画化。姫路藩藩主・松平直矩が幕府から豊後の日田への国替えと減封を言い渡され、引っ越し奉行に選ばれた本の虫の書庫番・春之介は一世一代の大仕事に臨む。監督は「のぼうの城」の犬童一心。原作者の土橋章宏が脚本を手がける。人と接するのが苦手で書庫にこもりきりの姫路藩書庫番・片桐春之介を、俳優・歌手・文筆家と多岐に渡り活動する星野源が演じる。
    83

今日は映画何の日?

注目記事