まず、このソフトを再生するとヴォイスオーバーが全編にかかっており、かなり気になる。(かなり目立ち誰でも気になると思う)
他の方が指摘されているようにこれしか音声は選択できない。この音声で観るしかない。
この音声は紙芝居のように横から口を出している感じになっている。非常に非常に残念な仕様だが、この映画、現時点ではこのソフトしか観られない。
まあ、紙芝居≒絵物語といったように感じることが出来れば‘味’といえなくもない。(…かな?)
パラジャーノフといえば『ざくろの色』が有名だが、本作や『アシクケリブ』のほうが比較的通俗的な語り方をしておりパラジャーノフなりの娯楽性を見せているのではないかと思う。
実のところ、パラジャーノフは前作である『ざくろの色(サヤト・ノヴァ)』から本作までソ連当局から(日本にいる我々には想像できないような)迫害をうけ投獄され‘元’映画監督というレッテルをつけられ、収入もなく仲間に助けられて暮らす日々を送ったという。そんなパラジャーノフがペレストロイカの進行に伴って制作再開のチャンスを得てやっと撮影できたのが本作だ。
本作について、久しぶりの映画製作で上手く本領が発揮できない部分もあったと、本人も認めている(共同監督にクレジットされているドド・アバシッゼは古くからの友人で、久しぶりの撮影を補助してくれたという)
本作が、どこか『ざくろの色』に比べて、つめが甘い印象があるのはそういった背景も無視できないだろう。
といいつつも、やはり、本作は楽しい。
まさに絵物語といった様相で、リアリティなどまったくない。一般的な意味でのドラマ的な娯楽性(例えば、ラストにむけて盛り上がるとか)も一切ない。(パラジャーノフの映画だから当然か)
だが、独得の魔術的映像(不思議なカットが大量にある)と刺激的な異世界の衣装や背景・音楽などは‘絵巻物’を眺めるかのようでとても楽しい。82分という比較的短い映画でもあり気軽(?)見ることができる。
仕様(音声)は残念だが、貴重なソフトであることは間違いない。
とりあえず(他にソフトがない以上は)お勧めします。好みにあえば何度も再生するソフトとなると思う。(私みたいに。…もはや問題のヴォイスオーバーでさえ慣れてしまい大して気になりません)