いや~、映像文化社のこのパッケージデザインは最高だな! 爆笑しちゃったよ。
朝日新聞出版から「初DVD化」された時は、なんだかよくわからないジャケで、フツーのコメディ・マカロニかと思って中々観なかったのだが、これだったら一発で「夕陽のガンマンのパロディ」だっていうのが伝わるよねぇ。
やっぱ、ジャケはソフトの顔。そこに力を入れるか入れないか、で担当者の情熱のほどが判るのだ。
本作『夕陽のギンコーマン』('66)は、『夕陽のガンマン』を徹底的におちょくりまくった作品で、コメディというよりはパロディである。
冒頭、遠くから馬に乗ってやってくるガンマンを、拳銃で狙い撃ち・・・という導入までクリソツ(笑)。しかしハズれる。今度はライフルで・・・これまたハズれ。で最後は大砲がニュ~っと画面の端からフレーム・イン(爆)。ど~んと一発かますが、これも・・・ことごとくハズれるというフザケっぷり。
で、オープニングクレジットが「夕陽」そっくりの書体で流れる中、可愛らしい人形アニメが展開する。これはオリジナルだ(笑)。
と、こんな感じで始まる本作、どんなお話かというと、主人公は賞金稼ぎではなく、銀行の出納係である。
さえない銀行員のビル(ランド・ブッツァンカ)は、何度計算しても納金と出金の額が合わず、困り果てている。頭取は、数ドルの差額も許さず強制労働送りにする鬼野郎(笑)。困り果てたビルは、イーストウッドとクリソツのポンチョを羽織って町を逃げ出す。向かった先は、リー・ヴァン・クリーフのコスプレをした従兄弟のフランク(ライモンド・ヴイアネロ)。しかし事業に失敗して尾羽打ち枯らしたフランクは、トンでもない提案をする。
ビルに悪事を働かせて賞金を掛けさせ、フランクが連行して賞金を頂いた後に脱獄させる、というアイディアだ。
トンチンカンな悪事を何度か繰り返した後、計画通り拘置所にぶち込まれたビルがそこで出会ったのは、ジャン・マリア・ヴォロンテによく似た悪党メキシカン(エリオ・パンドルフィ)だった(笑)。
そして気づくと、ビルはメキシカンの一味と一緒に自分の銀行を襲撃するハメに・・・。
要するに『夕陽のガンマン』ありきのお遊び作品で、知っているヒトならニヤりとしてしまうパロディの連続だが、言ってみればほとんど意味なしの一発ギャグの豆鉄砲みたいな感じ。洋画をさんざん観ている方なら、日本人とガイジンの笑いのツボはかなり違うというのを心得ていると思うが、基本的に日本人にウケるようなひねりの効いたギャグではなく、『ミスター・ノーボディ2』クラスのギャグですわ。
だから、爆笑するような内容ではなく、たまにニヤっとするか呆れて苦笑するか、みたいな感じです。
例えば、「夕陽」でクリーフが馬のサドルにライフルを弾帯のように何丁もぶら下げてたでしょう。でフランクが酒場で上着をめくると、裏に皮を二つ折りにしたものがついていて、すわ武器が鈴なりか! と思うとパイプがたくさん・・・みたいなどうでもいいお遊び演出(笑)。こういうノリで、ベースは「夕陽」なんだけど『荒野の用心棒』の“胸に鉄板入れてる”とか、『続・荒野の用心棒』の“棺桶引きずる”、みたいなのもパロってるんだけど、どれも深い意味はない(笑)。
衣装や小道具が「夕陽」そのまんま流用だろ(制作コスト削減か・笑)、とビジュアルは分かりやすい一方で、ビルもフランクも顔は全然イーストウッドやクリーフに似てなくてピンと来ないのだが、メキシカンを演じる俳優だけはヴォロンテにちょっと似ていて、さらにあの神経症っぽい演技もうまく真似ていて、そこは笑ってしまった。
後半はオルゴールを使った決闘シーンとか、「夕陽」でもやってないような、足や手や頭を銃で撃ち落とす残虐(?)描写・・・まあ作り物臭いので見ていてちっともグロくはないが・・・なんかもあったりして、ここまでふざけまくったマカロニは他ではちょっとないよね。
フランクとメキシカンには、実は因縁の過去があった・・・みたいな「夕陽」そっくりの設定(回想シーンもあり・笑)もあるのだが、散々盛り上げておいて全く伏線を回収しないテキトーな脚本はどうなのよ、と突っ込みどころも満載の内容である。
ちょっとオリジナルの要素で面白かったのは、巨大な石の下に共同墓地があって、その地下納骨所がメキシカンの隠れ家みたいになっている、という設定。もっとこういう要素を入れた方が良かったんじゃないかな?
クライマックスの銀行襲撃シーンも、くだらなすぎるアイディアに笑っちゃいます。トホホ方向の笑いだけどね(笑)。
まあそんな訳で、爆笑コメディ映画っていうよりは、ひたすらナンセンスなギャグを羅列していく感じの映画です。
トラッシュムービーを観慣れている人はともかく、普段はハリウッド映画しか観ません、みたいな人には笑えないと思います。少なくとも『夕陽のガンマン』観ていないと元ネタが分からないからね。
マカロニ・マニア限定のパロディ映画です。一度ぐらいは話のタネに観ておいても損はないと思うけど、マカロニ話ができる友達がいないとイミないよね(笑)。
さて、恒例の商品スペックですが、例のごとく朝日新聞出版からリリースされたDVDに基づいてます。マスターは同じものだと思うので、参考にして頂ければ幸いです。
画質はまあまあ。細かい部分は若干ぼやっとしていて、一昔前のDVDの標準的な画質。大きい画面だとキレが甘い感じがすると思うが、ポータブル再生機の画面だったら全く問題ない画質。
プリント状態は良く、色や明るさも問題なし。
シネスコサイズで、ハイビジョンTVでもフルサイズで視聴できる。
音声はイタリア語のみ。
【予告編】https://www.nicovideo.jp/watch/sm33921854