この作品は、若い頃からシネフィルだった亡き母が最も好きな映画の1本だと言っていた。戦前の日本公開時に、女子大生だった母は劇場で鑑賞している。
僕はタイトルはよく知っていたものの、ちょっと食指が動かなったのだが、10数年前に、年間500本の映画を見るという友人が、彼の最も好きな洋画10本のうちの1本に挙げていたので、遅まきながらDVDを見たら、僕もすっかりこの作品の虜になった。と同時に、母が何故この作品に惹かれたのかも良く分かった。
戦前の特権階級の家に生まれた母は、近づく戦争の足音と共に、これから訪れるであろう波乱万丈の生涯を予感していたのだと思った。この作品において、ヒロインがかつて舞踏会で踊った男性達が流転の人生を歩んだように…
余談だが、フランス映画好きの母の影響で、僕は小学校低学年の頃から既に、ルイ・ジューベやジャン・ギャバンやジェラール・フィリップなどの俳優を知っていた。母のお気に入りはジャン・マレーだった。世代は異なるが、母はアラン・ドロンが嫌いだった。
このBDは、若し叶う事なら母と一緒に見ようと思って予約したのだが、願い空しく、BD到着から1か月余りで未見のまま母は96歳で他界した。