1作目は、さすが侯孝賢。町や自然の風景の描写が素晴らしい。汗まみれ、ホコリまみれで、メークも取れかかったピエロの風体で、映画の看板を首から下げて、歩く主人公の姿もペーソスだけでなく、凄み、おかしみないまぜで、彼の歩く街も寂れ加減が愛おしい。若い妻、生まれたばかりの赤ん坊、懸命に生きている姿が微笑ましい。
2作目。長閑な漁村。「しあわせ」という名の日本製の圧力鍋のセールスに、都会からやってきた2人のセールスマン。時短料理なんて興味もない漁村の人々。帽子を被った美少女。ゆるい時の流れが、一変するラストに驚く。
3作目。交通事故のファーストシーンが衝撃的。シャキッとした格好の加害者のアメリカ人と通訳が、被害者の家族を探して歩くドヤ街、どこかの家のラジオから流れてくる、台湾語?の演歌が印象的。被害者が運びこまれたアメリカ病院は壁も床も人も真っ白で、清潔を絵に描いたような世界。そこへ被害者の妻、4人の子どもたちがやってきて、子どもたちは大はしゃぎ。被害者の仕事仲間の汚れ顔のおっさんたちまで押し寄せ。クリーンな空気をたちまちかき回す爽快さ。家族は、アメリカ人の差し入れたサンドイッチは食べるわ、リンゴはシャリシャリ食べるわ、見舞金の札束にニンマリするわで、何ともたくましく愛らしい。