略歴 / Brief history
東京市豊島区(現・東京都豊島区)の生まれ。本名・原田眞。父は時代劇俳優の藤間林太郎で、子供の頃から子役として映画に顔を出していた。父の仕事の関係で、東京、大阪、京都を転々とし、1951年に京都市立堀川高校を学費が続かずに1年で中退。19歳で地方回りの劇団に入り、司会や歌、コントなどを担当する。23歳で歌う声帯模写を開業、流行歌手の物真似で一本立ちした。57年に地方回りをやめて、大阪・北野劇場の準専属コメディアンとなり、朝日放送の『ダイラケのびっくり捕物帖』57~60を皮切りにテレビに出演する。同局『スチャラカ社員』61~66で一躍人気者となり、主演した『てなもんや三度笠』62~70は大阪で60%、東京で50%の視聴率を獲得する国民的ヒット作になった。その傍ら、映画には60年代前半から顔を出していたが、63年にテレビ版をリメイクした東映「てなもんや三度笠」では引き続き主演。以降は、クレージー・キャッツ主演映画の客演や、多くの喜劇映画に出演を重ねる。ただ、それらは彼のユニークな馬面と関西弁を駆使したテンポのいい台詞回しを前面に押し出した、テレビのイメージの延長線上にある役が多かった。その中で注目されるのが、小林正樹監督「日本の青春」68である。ここでは学徒出陣して恐怖の体験をした男の戦後の半生をシリアスに演じて、俳優としての実力を見せつける。『てなもんや三度笠』の放送終了後、キャバレーでドサ回りをしたりと低迷した時期があったが、73年に朝日放送の『必殺仕置人』で同心・中村主水役に起用されて転機が訪れる。奉行所では“昼行灯”、家に帰れば“種無しかぼちゃ”と馬鹿にされながら、実は凄腕の殺し屋である主水のキャラクターは、若い頃から人生の裏と表を見てきた彼にとって一世一代のはまり役となった。『必殺』シリーズは以後も中断を挟んで92年3月まで続いたが、藤田が演じる主水はシリーズの顔として不動の人気を得る。さらに、88年からテレビ朝日の人情刑事ドラマ『はぐれ刑事純情派』では主役の安浦刑事を18年間に渡って演じ、98年から亡くなる年まで、池波正太郎原作のフジテレビ『剣客商売』では老剣客・秋山小兵衛を演じるなど、主水以外にも長い期間をかけて当たり役を次々に育てていった。また舞台でも、ミュージカル『その男ゾルバ』や、歌手・東海林太郎の生涯を演じた『東海林太郎物語・歌こそ我がいのち』など、何度も再演されたヒット作がある。基本の活動フィールドをテレビに置いていたため、70年代に『必殺』シリーズで人気が再燃してからも映画出演はそれほど多くないが、83年の齋藤光正監督「積木くずし」では非行に走る娘に苦悩する父親を好演したほか、計6本作られた『必殺』シリーズの劇場版ではテレビの世界観をさらにスケールアップさせて、仕事人・主水の多面的な人間性を披露するなど、その演技巧者ぶりはどの作品からもじゅうぶんに窺うことができる。さらに、晩年を代表する役となったのが、2008年の小泉堯史監督「明日への遺言」で演じた岡田資中将で、太平洋戦争中の米兵捕虜刺殺事件に関する戦犯裁判を描いたこの作品で、藤田はすべての最終的な責任を引き受けようとする岡田中将を誇りを持った軍人として、また包容力のあるひとりの人間として見事に演じた。同作でおおさかシネマフェスティバルの主演男優賞を受賞。しかし、08年4月に食道癌が見つかり、その後は入退院を繰り返したが、10年2月16日、大動脈瘤破裂によって76歳でこの世を去った。亡くなる前年、最後の『剣客商売スペシャル』を撮影中、藤田は同じ池波正太郎原作でも「『鬼平犯科帳』は嫌いだ」と語っていた。その理由は、主人公が権力側の人間だからだという。確かに、藤田の当たり役はどれも社会の底辺で生きる庶民ばかりだった。社会的に高い地位を演じても権力を振りかざすような役は少なく、俳優人生は常に大衆とともにある、それが俳優・藤田まことの基本姿勢だったと言える。2010年2月16日、逝去。享年76歳。
映画専門家レビュー
今日は映画何の日?
NEW今日誕生日の映画人 3/3
- ジェシカ・ビール(1982)
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世界にひとつのロマンティック
突然の事故で脳に釘が入ってしまったアリスは温厚な性格が一変し、衝動的な性格に。出逢ったばかりの政治家とセックスしてしまうが、政治家と奇病女子の恋愛は問題ばかりで…。カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2019参加作品。 -
記者たち 衝撃と畏怖の真実
「スタンド・バイ・ミー」のロブ・ライナー監督が製作・監督・出演を兼任した社会派ドラマ。2002年、イラク戦争の大義名分である“大量破壊兵器”の存在に疑問を持った4人のジャーナリストが、愛国心高まる世間の潮流のなか、真実を追い続ける実話を映画化。出演は「スリー・ビルボード」のウディ・ハレルソン、「かけがえのない人」のジェームズ・マースデン、「トータル・リコール」のジェシカ・ビール、「バイオハザード」シリーズのミラ・ジョヴォヴィッチ、「クリミナル 2人の記憶を持つ男」のトミー・リー・ジョーンズ。
NEW今日命日の映画人 3/3
- 安井昌二(2014)
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小梅姐さん
「炭坑節」や「黒田節」など多くの民謡をヒットさせ、NHK紅白歌合戦でも美声を聞かせた芸者出身の歌手・赤坂小梅の生誕100周年を記念して製作されたドキュメンタリー。生まれ育った筑豊や芸者修行に励んだ北九州など彼女ゆかりの地を訪ね、数々の記録映像や関係者へのインタビューを交え、歌一筋に生きた彼女の生涯に迫る。監督は『ハイビジョンふるさと発~有明海に生きるカメラマンの物語~』などのドキュメンタリー番組を数多く手掛けた山本眸古。ナレーションを「悪名」の水谷八重子、作曲・音楽アドバイザーを「上方苦界草紙」の本條秀太郎が担当した。赤坂小梅。本名、向山コウメは明治39年(1906)年4月、福岡県川崎町に9人兄姉の末っ子として生まれる。16歳の時に自ら芸者を志し北九州の置屋「稲本」に。通常1年間の芸者修行を3ヶ月でこなし、1年で芸者デビュー、“梅若”を名乗る。昭和4(1929)年、九州一円の民謡研究のため小倉を訪れていた野口雨情、藤井清水らに認められ、レコードデビューを果たし、同6年に上京。同8年、コロムビアから発売した「ほんとにそうなら」が大ヒット。以来、端唄、舞踊小唄などを含め、多くの流行歌や民謡をレコーディングしヒットさせた。NHK紅白歌合戦にも4回出場、その豪放磊落な性格から多くの文化人や政・財界人などに愛され、大衆から支持された。酒豪でも知られ、恰幅のいい体型が特徴的だった彼女は昭和56(1981)年4月、75歳で引退。晩年は民謡の普及や福祉活動に勤しみ、平成4(1992)年1月17日死去。享年85歳であった。 -
楳図かずお恐怖劇場 まだらの少女
人の憎しみが生み出す蛇の呪いの恐怖を描いた中篇ホラー。監督は「恋する幼虫」の井口昇。楳図かずお原作の同名コミックを基に、「ホラ~番長 稀人」の小中千昭が脚色。撮影を「着信アリ2」の喜久村徳章が担当している。主演は、「Last Quarter 下弦の月」の中村有沙と「TRICK 劇場版」の成海璃子。尚、本作は「楳図かずお恐怖劇場」の中で、「ねがい」と2本立公開された。楳図かずおデビュー50周年作品。