十七代目中村勘三郎 ナカムラカンザブロウ

  • 出身地:東京市浅草区猿若町
  • 生年月日:1909年7月25日

略歴 / Brief history

父は三世中村歌六。兄に初世中村吉右衛門と三世中村時蔵。16年11月、三世中村米吉の名で市村座『爼板長兵衛』の長松で初舞台。29年10月、明治座『白石噺』の信夫で四世中村もしほを襲名、名題となる。34年、東宝劇団結成に参加したが38年に解散したため関西へ移る。戦後は兄・吉右衛門のもとで修業。50年1月、東京劇場『一条大蔵譚』の大蔵卿、『上覧猿若舞』の猿若で十七世中村勘三郎を襲名する。54年9月の吉右衛門の死後は吉右衛門一座の中心として活躍する一方、岳父にあたる六世尾上菊五郎の芸を継承、戦後の歌舞伎界を代表する名優となった。立ち役、女形、老け、舞踊と芸域は広く飄逸味のある華やかな芸風は逸品。当たり役としては『身替座禅』『髪結新三』『文七元結』『ぢいさんばあさん』『盲目物語』『一条大蔵譚』などがある。60年の訪米歌舞伎、61年の訪ソ歌舞伎、65年の訪欧歌舞伎にいずれも座頭格で参加。若いころは喜怒哀楽が激しく、そのため批判もあびたが、芸の円熟とともにそうした欠点も消えた。毎日演劇賞、テアトロン賞、芸術院賞を受賞、70年に芸術院会員、71年に文化功労者、75年に重要無形文化財(人間国宝)指定。現代劇や翻訳劇にも出ている。映画初出演は、山本薩夫監督の歌舞伎座映画「赤い陣羽織」(58)で、木下順二の卓抜な戯曲を原作とし、封建時代、庶民の健康なエスプリが権力にうちかつというこの風刺劇で、その権力の象徴である赤い陣羽織を着た主人公の代官・荒木源太左衛門は、すでに勘三郎の舞台での当たり役のひとつになっていたが、映画では妻の役の香川京子、懸想の相手の有馬稲子を相手役に、女好きで権力風を吹かすが実は臆病な男を表情たっぷりに演じて堪能させた。そのほか木下恵介監督の松竹「今日もまたかくてありなん」(59)では、戦争での罪を意識して世捨て人のように暮らしているが、平和な生活を脅やかすやくざの暴力に敢然と立ち向かう旧軍人を好演。豊田四郎監督の東宝「四谷怪談」(65)では直助権兵衛を演じ、中村登監督の松竹「わが恋わが歌」(69)では貧苦と病苦の生涯を送った歌人・吉野秀雄を見事に演じ、感銘をあたえた。テレビはNHK『新・平家物語』(72)、テレビ朝日『名探偵雅楽登場』(79)(TVムーヴィー)など。1男2女あり。長男・勘九郎は歌舞伎、長女・波乃久里子は新派で俳優をつとめ、2女は沢村藤十郎に嫁している。

十七代目中村勘三郎の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • シネマ歌舞伎クラシック 身替座禅

    名優達の至高の芸が、銀幕(スクリーン)によみがえる。シネマ歌舞伎第2弾クラシック。上演月:1982年(昭和57年) 11月、上演劇場:歌舞伎座
  • シネマ歌舞伎クラシック 勧進帳

    名優達の至高の芸が、銀幕(スクリーン)によみがえる。シネマ歌舞伎第2弾クラシック。上演月:1980年(昭和55年)11月、上演劇場:歌舞伎座
  • シネマ歌舞伎クラシック 隅田川

    第四期歌舞伎座の公演を映画館で上映する“シネマ歌舞伎クラシック”第一部。息子をさらわれて狂女となった母の心情を、繊細な演技で描き出す松羽目物。海外でも度々披露された六代目中村歌右衛門の代表作のひとつ。十七代目中村勘三郎が息の合った舟人役をつとめ、清元志寿太夫の語りが哀しみを誘う。1981年1月上演。
  • シネマ歌舞伎クラシック 梅雨小袖昔八丈 髪結新三

    第四期歌舞伎座の公演を映画館で上映する“シネマ歌舞伎クラシック”第三部。江戸の下町情緒と梅雨時の季節感あふれる世話狂言で、髪結による誘拐劇の顛末を描く。出演は、十七代目中村勘三郎、十三代目片岡仁左衛門、七代目尾上梅幸、七代目中村芝翫、十八代目中村勘三郎、十七代目市村羽左衛門。1981年5月上演。
  • わが恋わが歌

    吉野秀雄の随筆集『やわらかな心』、山口瞳の『小説・吉野秀男先生』、吉野の次男壮児が著した『歌びとの家』を原作に「赤毛」の広沢栄が脚本を執筆し、「結婚します」の中村登が監督した文芸もの。撮影は「七つの顔の女」の竹村博。
  • 四谷怪談(1965)

    鶴屋南北原作“東海道四谷怪談”を、「波影」でコンビの八住利雄が脚色、豊田四郎が監督した怪談。撮影は「侍」の村井博。
  • 笛吹川

    深沢七郎の同名小説の映画化で、戦国時代を背景に笛吹川のほとりに住む貧農の五代にわたる約六十余年の物語。「春の夢」の木下恵介が脚色・監督した。撮影も「春の夢」の楠田浩之。
    70
  • 今日もまたかくてありなん

    「惜春鳥」の木下恵介が書き下ろし、自ら監督したもので、庶民生活の空しさ、悲しさを描き出そうとするもの。撮影も「惜春鳥」の楠田浩之が担当した。
  • 赤い陣羽織

    木下順二の民話劇を映画化したもので、庶民の健康なエスプリと封建制未成熟時代の支配者のとぼけたおかしさを笑いの中に捉えようというもの。脚色は「密告者は誰か」の高岩肇、監督は「台風騒動記」の山本薩夫、撮影は前田実。中村勘三郎が舞台と同じ役を演じて映画初出演するほか、有馬稲子・香川京子・伊藤雄之助・三島雅夫などが顔を揃える。

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