キーパー ある兵士の奇跡の映画専門家レビュー一覧

キーパー ある兵士の奇跡

第二次世界大戦で英国の捕虜となったナチスの兵士が終戦後、困難を乗り越えて英独を結ぶ平和の架け橋として活躍した実話を映画化。英国の捕虜収容所でゴールキーパーとしてスカウトされたナチス兵のトラウトマンは、名門サッカークラブに入団するが……。出演は「愛を読むひと」のデヴィッド・クロス、「サンシャイン/歌声が響く街」のフレイア・メーバー。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    冒頭のダンスシーンと戦場シーンとの対比から、次第に戦場シーンがサッカーシーンへとスライドしていく様。三態とも命を燃やし消耗していく。ある意味「生命の輝き」そのものの現象として描写。敵対関係から甘い恋愛に落ちていく様相から、喪失や悲劇まで経験の物語の振り幅は、『愛の不時着』や「博士と彼女のセオリー」などの要素を彷彿させるオカズ満載の満足感を感じさせる。最大公約数的に共感を得る作品。戦争による国家間の喪失は、男女の人生における代償とも重なる。

  • フリーライター

    藤木TDC

    映像が美しく後味の良い感動実話。しかしスポーツの才能で戦争の怨讐を克服する核心のテーマに関しては、実際になし得た優秀な選手がいた事実=現地の常識に依存しすぎ、物語でその困難な過程の再現に成功していない。とくにトップリーグに転じて以後、ドイツ人主人公がいかに英国大衆の支持を得たかの重要な部分が大幅に端折られている。戦時に敵国どうしだった男女の恋愛が簡単に成就するのもテレビドラマ的で安直。スポーツ好きにはサッカーの技術描写の乏しさも寂しい。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    確かに目立った人生を送った有名人かもしれないが、約2時間の映画として描くには魅力的な逸話が乏しい。セリフで世界観を埋めるとか、些末に独特な演出を施すなど引き延ばしにも方法があるだろうが、本作は心を?むような個性がなく平凡に終わっている。イギリスで暮らすことになる元ナチス兵士を巡る葛藤は、もっと深く考察できるのでは。トラウマとなっている戦時中の出来事も確かにつらい過去なのだが、まどろっこしい匂わせ編集のせいで鮮烈さが消えて予測を超えない。

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