ある画家の数奇な運命の映画専門家レビュー一覧

ある画家の数奇な運命

「善き人のためのソナタ」のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクが、現代美術界の巨匠ゲルハルト・リヒターの半生をモデルに綴ったドラマ。ナチス政権下の安楽死政策で叔母を失ったクルトは戦後、美術学校で出会った女性エリーと恋に落ちるが……。出演は「ピエロがお前を嘲笑う」のトム・シリング、「善き人のためのソナタ」のセバスチャン・コッホ、「婚約者の友人」のパウラ・ベーア。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    前半は交錯し運命に翻弄される群像劇だが、後半から一青年をして現代美術史の再現、その軌跡の入門的な解説映画となってしまった。歴史上の個性的な有名人のモノマネではなく、映像にしかできないことをやらねばならない。リヒターはその後「サスペリア」でも魔女と並行で描かれるバーダー・マインホフ事件のフォトビルト技法をして歴史画を問題にする。近年ボイスのタタール人のエピソードも神話性作りの捏造説もある。Wiki程度の情報で脚本を書いている気がしてならない。

  • フリーライター

    藤木TDC

    才能に恵まれた主人公が理解ある人々に囲まれ成功するだけの出来の悪い朝ドラみたいな凡作。テレビドラマ並みに“善き人”だらけな話をわざわざ劇場まで出向いて見たいか? 加えて初期リヒターの有名作の下手糞な模造ほか画面に映る美術作品がコントの書き割り級に安っぽく監督の美術センス欠如が露呈。たとえ小道具でも観客をハッとさせないと現代美術をテーマにする意味がない。不評を危惧したか、やたら裸と性交を見せるサービスで3時間超。★2でもいいが無駄な長尺を減点。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    前半と中盤以降で異なる映画を観ているような不思議さ。ナチスのユダヤ人や同性愛者への迫害を描いた映画はあるが、精神疾患者への断種を取り上げた映画は珍しい気がする。主人公クルトが美術学校に入ってからは恋愛を中心に、画家としての道を模索したりアート談義をしたりといったシークエンスが多く、イマイチそれが面白くない。確かに数奇な設定はあるものの、クルトの美術作品はどこに向かっているのか測りかねるし、クライマックスで彼が編み出した手法も感銘を受けず。

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