きみの瞳(め)が問いかけているの映画専門家レビュー一覧

きみの瞳(め)が問いかけている

韓国映画「ただ君だけ」を原作にした純愛ストーリー。不慮の事故で視力と家族を失うも、明るく生きる明香里は、塁と出会う。将来を有望視されたキックボクサーだった塁は、ある事件をきっかけに未来を失い、心を閉ざしていた。やがて二人は惹かれ合うが……。出演は、「検察側の罪人」の吉高由里子、「いなくなれ、群青」の横浜流星。監督は、「フォルトゥナの瞳」の三木孝浩。
  • 映画評論家

    北川れい子

    今どき、ここまでベタな偶然と運命で進行するメロドラマが作られたことに、逆にカンシンする。若く美しい盲目の娘と、心に傷を持つ前科持ちのイケメン青年。偶然出会った2人は、実は不幸な因縁で結ばれていたというのだが、あれやこれやの小道具を使ってのエピソードにしろ、青年の過去の話にしろ、どの場面もくすぐったいほどベタで、観ている当方はただアレヨ、アレヨ。終盤のすれ違いなど、少女漫画だって敬遠しそう。バカ真面目に演じている主役2人に秘かに同情したりして……。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    「罪の声」の直後に観ると、画面構成や映像の余韻になにかを語らせようとしている点が好印象。一方で物語については、元の韓国映画もそうだが、どこまでも愚直で類型的なため、画面に傾注しすぎるとかえって細部の空疎さが目立ってしまう。むしろ大元ネタの「街の灯」がその点でいかに巧いかを再確認させられる結果に。恋人を背負う場面は神代辰巳の「青春の蹉跌」、顔に触れる場面は河瀨直美の「光」を思い出しもしたが、いずれも画面の美しさ以上のものが迫ってこない。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    前半、かなり引き込まれた。つらい経験をもつ二人が出会い、心を通じさせていく。いまの日本だからこうなるというものにできれば、どんなによかったか。チャップリンの名作をヒントにした韓国映画のリメイク。キリスト教的な善悪の枠組みを土台にした、これでもかという大メロドラマになり、地面が見えなくなった。三木監督たち、人にも社会にもなにかを「問いかける」気はなさそうだ。天使性ありの吉高由里子に、静と動の振幅に地力を感じさせる横浜流星。すてがたい魅力はある。

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