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専門家レビュー一覧

  • 映画 賭ケグルイ

    上野昴志

    この素材、よく考えて作れば、学園内政治劇になったかもしれないのが、それとは裏腹の、ガキ共がやたら騒ぎたてるだけの話になってしまった。それも、喋りまくる女子の顔アップばかりが目立つ。決定的なのは、賭けが、どう出るのか、という展開にまったくサスペンスがないことだ。見ているこちらが、こうなるだろうと思う通りの結果しか出てこないのでは、手に汗握るどころか、脱力感と一緒に欠伸が出てしまう。生徒会長役の池田エライザが、言葉少ないのが救い、といってもなあ……

  • 映画 賭ケグルイ

    映画評論家

    上島春彦

    世事に疎くて原作の件とか知らなかった。それでも(その方が?)楽しめる。映画を見ても主人公が何者か全く分からない。そればかりか、実はやってるゲームの内容もルールも私は理解していない。ただ美少女が賭け事に狂うというだけで、こんなにエキサイトできるとは正直意外であった。JKギャンブラー浜辺美波の美しさだけで十分もとは取った感じだし、銀髪女王池田エライザの高慢ちきもグッド。でも明らかに話は途中で終わっている。惜しい。「帝一の國」ファンなら必見ものだが。

  • 映画 賭ケグルイ

    映画評論家

    吉田伊知郎

    原作もドラマも未見だが、連ドラ版と同時撮影されたせいか映画的なスケールには乏しく、SPドラマで良かったのでは。ぶっ飛んだ奇想を盛り込んでも学園内に限定させることで世界観を維持する点は良いとしても、それを補強し、リアリティを与える演技には疑問。子役出身者も含めた実力派若手俳優が揃っているので大仰な演技もこなせるが、浜辺以外は大仰になりすぎて緩急が利かず、延々と見せられて胸焼けしそうに。「麻雀放浪記2020」よりゲーム性を重視している点は良い。

  • 田園の守り人(もりびと)たち

    北里宇一郎

    第一次大戦を背景にして反戦を謳わない。戦場よりも銃後。戦闘よりも労働。女たちの農作業画面が淡々と。そのミレー的映像に見惚れる。この家族を揺るがしたのがアメリカ兵と米国産トラクター。それよりも奉公女という流れ者が、この一家を支え、息づかせる。たとえシングルマザーになろうとも、きりりと生き抜くこのヒロイン像に、監督の限りない女性憧憬がうかがえて。幕切れ、芝居どころを排して、さらり歌で通したこと。それとルグランの音楽が絶妙のタイミングで入ること。感嘆。

  • 田園の守り人(もりびと)たち

    荻野洋一

    第一次世界大戦を農村の女性視点から観測する試みは、19世紀/20世紀の消長を現代的な距離で見据えるためだ。ナタリー・バイ演じる農園の毅然とした女主人が最後にしくじった際の呆然自失ぶりは素晴らしい。そして新人イリス・ブリーの存在は、「嵐の孤児」(21)のリリアン&ドロシー・ギッシュ姉妹の同時代人そのものだ。実はギッシュ姉妹に隠し三女がいて、フランスの田舎でしぶとく生き延び、百年後に解凍され、活き活きと動き回っているかのような錯覚を覚える。

  • 田園の守り人(もりびと)たち

    石村加奈

    フランシーヌがオルタンスの家を初めて訪れた時、楽器の女王フルートの際立つ、美しい音楽が、シーンにそよ風を起こす。孤独なフランシーヌの人生は、歌と共にある。周囲の人々の不安を和らげたその歌声はやがて、いとしい息子に向けた子守歌ではなく、「愛なんてはかない」と、彼方を見つめて歌うようになる。息子を育てるためと想像しても、その姿は哀しい。オルタンスが田園で長男の訃報を受け取った時の、カメラワークと音楽も、母親の深い哀しみを切り取る。こちらは嵐のような。

  • ペトラは静かに対峙する

    北里宇一郎

    第2章からはじまって、3章、1章と映画は時制を交錯させて展開。どこかパズルを解いていくような。演出はしっかりしていて見ごたえがある。スペインの田園地帯、その乾いた空気。ミステリー的雰囲気も良くて。だけどこの物語、まともに語れば、よくある話とも思える。結末まで分かって、もう一章、前に返したとき、これまで見てきた人物像なり事象がまったく違って見えた。そこに人間の謎が隠されていた。そんな“決め”技がほしかった。なんか話法だけで安心している映画の気が。

  • ペトラは静かに対峙する

    荻野洋一

    信用のおける登場人物をどうやら一人も見出せぬ本作で、観客は何を信じたらよいのか。最も興味深い人物は諸悪の根源たるジャウマなる売れっ子美術作家だが、彼とて周囲からの俗物扱いを覆す奥の手を持ち合わせているわけではない。イジワル根性が肥大化した領地で、アートが単なるスノビズムとして断罪されることによって、私たち観客は侮辱を受ける――私たち自身の美への愛が、依存が。時系列を狂わせた脚本の工夫も、思わせぶりなカメラワークもその屈辱感を晴らしはしない。

  • ペトラは静かに対峙する

    石村加奈

    ヒロイン・ペトラに、父親が誰かを明かさぬまま死んだ母は、昔からずっと娘の顔が好きだったと笑顔を見せた。血でも性格でもなく、顔が好きだという親<人としての愛すなわち真実。最終章で、鏡の中の自分の顔をまじまじと見つめていたペトラにも、漸くその愛は伝わったのだろう(この時遂に、表題の境地に至る)。偽りの連鎖で繋がった悲劇は、希望の結末を迎える。ここまで徹底的な悪キャラ=ジャウマは久しぶりで痛快。ジャウマ役のJ・ボテイ、77歳の俳優デビュー作とは驚きだ。

  • ピアッシング

    北里宇一郎

    原作に描かれた男の過去はちらり匂わすだけ。女の過去に至っては微塵もない。それゆえか映画は猟奇スリラーの色が濃くなって。殺人嗜好の男が大マジメにアイスピックを振りかざしてトレーニングをする。そこにオカシさが滲む。だけど狙った女が彼以上のサイコだったというところ。なんだかヒッチコックの巻き込まれ型サスペンスを思い起こさせ、翻弄されるのが殺人鬼だったというところに皮肉な面白さがある。となれば、脚本・演出にもっと工夫と洒落っ気があればと歯ぎしりもして。

  • ピアッシング

    荻野洋一

    ミア・ワシコウスカが少女役として出てきた当初、スラヴ的なエキゾチシズムで危険な魅力を放っていた。本作もそのイメージの延長線上で得体の知れないSM嬢を演じさせている。しかしその配置はもはや「ワルの予定調和」だ。村上龍的な都市の夢魔性、退廃、浮遊感。バートン、ヴァン・サント、ジャームッシュ、クローネンバーグといった作家たちを魅了した少女の威力は今、まるで日本のインディーズ映画のような箱庭宇宙の中を揺蕩っている。そういう時期も必要なのかもしれないが。

  • ピアッシング

    石村加奈

    蓮實重彥氏は文庫本の解説で、原作の魅力を「直線性」という言葉で評した。殺人衝動を持つ男と自殺願望を持つ女が出会うスタイリッシュな物語独特の緊迫感、直線的な展開には、ニコラス・ペッシェ監督の原作への理解(タイトルバックとエンドロールの直線的で、美しい建物の映像!)を、男がホテルの廊下で出会う外国人の老夫婦から妻を探す男性老人への変更には時代の変化を感じた。映画のユーモアは原作より不条理気味。好みが別れるところだが、最後の台詞は原作の方がシャープだ。

  • COLD WAR(コールドウォー) あの歌、2つの心

    北里宇一郎

    題名がずばり“冷戦”。ポーランドの「灰とダイヤモンド」「夜行列車」のあの頃を思い出し、スタンダード白黒の画面が懐かしさに拍車をかける。ソ連体制下の国から亡命した男と留まった女のすれ違い恋愛劇。2つの心はどちらにいても安逸を得ない。そのひりひりを、もうもう貴方しかいないところまで追い詰めていくこの脚本。切ない。だけどその切実さがワイダ、カワレロウィッチまで迫ってこないところに、時代の隔たりを感じて。この監督、少しスタイリッシュに過ぎるのではないか。

  • COLD WAR(コールドウォー) あの歌、2つの心

    荻野洋一

    第二次大戦終戦から戦後混乱期にかけての男女のクッツイタリ離レタリは、まるで吉田喜重「秋津温泉」東欧版のごとし。共産化したポーランドからパリに亡命した男が芸能界で俗物化する展開も「秋津温泉」に似るが、吉田が東京シーンをあえて精彩を欠く描写としたのに対し、今作は硬めに引き締まったモノクロームが効いて、ヌーヴェルヴァーグ胎動期のパリを生々しく起き上がらせる。単にメロドラマ的情熱に終始せず、流転の副産物をも見据えようとする透徹ぶりに舌を巻いた

  • COLD WAR(コールドウォー) あの歌、2つの心

    石村加奈

    年上のピアニストとの恋に落ちるズーラが魅力的だ。自分の未熟さを知っている、聡明なヒロインである。時代や環境が変わっても、二人の恋の炎は決して消えることがなく、ゆえに切ない。監督が三番目の登場人物と語る音楽も素晴らしい。民族音楽からジャズへとアレンジを変えて、劇中で繰り返し歌い継がれる『心』はもちろん、エンドロールで流れる『ゴルトベルク変奏曲』も、耳をすませて聴いてほしい。教会の丸窓に切り取られた空から、荒れ地へと転調するカメラワークもドラマチック。

  • キングダム(2019)

    映画評論家

    北川れい子

    広大な原野での戦闘シーンや王宮セットなど、中国での大掛かりなロケが物語のスケール感になっていて、各キャラクターの衣裳やメイクも凝っている。馬やエキストラの数にも感心する。ただどうしても戦闘絵巻ふうの物語にこちらの気持ちが乗っていかず、観るというより人物やそのアクションをただ“眺めている”気分。だからかつい山𥔎賢人がキャンキャンうるさいとか、長澤まさみの腕の肉付きに目が行ったりと、どうでもいいことばかりが気になって。大沢たかおの色気と貫祿は出色。

  • キングダム(2019)

    映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    こちとら四十代の男によくある横山光輝『三国志』世代。本宮ひろ志の『天地を喰らう』、ついでに『赤龍王』(項羽と劉邦もの)も通過。漫画にはまらぬ者も中学頃にゲームにはまった。「レッドクリフ」を封切りで観た際、冒頭に東宝東和がつけた? 背景解説に対して客席に満ちた、今さらそんなものいらん!の空気よ。非文芸系中国歴史愛好民よ。そこから十年、春秋戦国時代を題材に、かつて本国に召し上げられた「墨攻」に負けぬ国産の中国歴史もの。よくぞやってくれたと感無量。

  • キングダム(2019)

    映画評論家

    松崎健夫

    瞬きを抑制することで高貴さを表現する吉沢亮のアプローチ。無表情ながらも姿勢や所作に対する細やかな配慮によって出立ちを構築し、荘厳さを感じさせる独特のオーラを己に纏わせている。漫画原作の映画化には再現性が求められがちだが、漫画の特性でもある“明確なビジョン”を超越したキャラクターを吉沢は実践してみせている。坂口拓の傍若無人ぶり、大沢たかおの物の怪ぶりなど、脇のキャラクターにも抜かりが無い。が、一年に一本製作しても完結に十年以上を要する憂慮はある。

  • 誰がために憲法はある

    映画評論家

    北川れい子

    恥ずかしながら、お笑い芸人・松元ヒロの「憲法くん」をこの作品で初めて知った。ベテランの女優たちによる原爆の朗読劇公演も今回が初めて。どちらもことば、つまり肉声によるダイレクトな憲法擁護、戦争反対のメッセージが込められていて、観ているときは心に強く響く。でもことばは次のことばに流される傾向がある。ことばから生まれたイメージは次のことばに流され、ことばばかりが押し合い、圧し合い。それとやはり松元ヒロ本人に「憲法くん」を語ってほしかった。

  • 誰がために憲法はある

    映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    私自身は護憲派。カジュアルに。本作主旨に賛同。ナチュラルに。大東亜戦争と称した戦争での敗北がどれだけ日本にとってデカかったか。それを体験したひとたちの皮膚感覚を通してそのことを追体験することが旧作日本映画を観ることには含まれる。それを長年積み重ねてきたためにいまの日本国憲法に価値を認めてきた。渡辺美佐子はじめ本作に登場する方々の活動を風化に抗う闘いだと思った。日色ともゑが語る宇野重吉の判断基準“そこに正義があるかどうか”、には感銘を受けた。

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