• TOP
  • 専門家レビュー一覧

専門家レビュー一覧

  • センターライン

    映画評論家

    上野昴志

    自動運転を制御するAIのMACO2がかわいい。とくに、その機械的な眼の動き。対する吉見茉莉奈扮する新人の女性検事が、型通りやたら気負っているのは狙いだろうけど、彼女の名を読み違えたりするMACO2とのやりとりが面白い。それと、ここまで発達したAIは、殺人容疑で起訴されることもあるという発想がいい。仮に死刑判決が出たら、どうなるのかと考えてしまう。後半の、弁護士の攻勢に対して、検事側が反証していくあたりの展開は、もう少しじっくり見せて欲しかったが。

  • センターライン

    映画評論家

    上島春彦

    アシモフの「ロボット三原則」は遠くなりにけり。という超低予算SFである。ロボットの殺意を立証できるか、というコンセプトなのだ。見過ごされてもおかしくなかったロボット犯罪が、主人公の女性検事の勝手な都合で裁判沙汰になる喜劇仕立ての発端から快調。物語が始まった時点で既に亡くなっている女科学者のキャラが鍵だが、これ以上は言えない。いわば女フランケンシュタイン博士だね。近未来なのだが現在とも言い得る、絶妙な設定のおかげで物語に引き込まれる。続篇を期待。

  • センターライン

    映画評論家

    吉田伊知郎

    現実の進歩を見れば、近未来の人工知能をめぐる裁判劇にも妙なリアリティを感じさせる。だが、HALを出すまでもなく、映画の側に現実が寄せてきたことを思うと、人工知能の心というテーマは既視感があるだけに、スケールの大きくなる話を低予算で巧みにまとめあげた点以外は新味もなく面白がれず。アトムのロボット法のような人間への従属や差別される者、あるいは敬意を持って対等に扱われるというようなルールがあれば良かったが、劇中のAIは雑に扱われているだけに見える。

  • 凪待ち

    映画評論家

    松崎健夫

    ごく普通に生きること、労働すること、そんな当たり前のことさえままならない日本の現状が物語の骨格を成している。そして高校生に「俺はここから出れねぇだけだ」という諦念を語らせることで地方の現実を悟らせてもいる。この映画に登場する男たちは「あの時、ああしていれば」という後悔を抱えた者ばかり。〈美しい波〉という名を持つ少女は、そんな男たちの心に“凪”を導く存在だ。これまで誰も見たことの無いような香取慎吾にも“凪”の訪れを感じさせる終幕は、厳しくも美しい。

  • 凪待ち

    映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    香取慎吾がいま新たに生きなおしているというどうしてもこちらに入ってくる芸能界的な情報を逆手にとって、もっと大きな再生に重ねた映画。人の営みの小ささ凡庸さが翳りとともにあらわれてそれを軽んじることを許さない。見甲斐がある。そもそも加藤正人のオリジナル脚本、人物造型が優れている。たしかにギャンブル狂というのは汚れとピュアさを併せ持つ人種だ。「熱い賭け」のジェームズ・カーン、「フェニックス」のレイ・リオッタを想う。あと吉澤健と寺十吾がもう最高っす。

  • 今日も嫌がらせ弁当

    映画評論家

    松崎健夫

    反抗期の娘は母親と「口をきかない」=「喋らない」。一方で、この映画の登場人物は総じてよく「喋る」。母親に至っては独り言のオンパレードだ。しかし、娘が少しずつ「喋る」ようになると共に無駄な台詞が徐々に削がれていることが判る。そして映画の終盤では、母親が娘の卒業のために作った“最後のお弁当”の映像を見せるだけで全てを語ってみせている。そこに台詞はない。キャラ弁を作る時間は、相手を想う時間でもある。その総和と台詞の総和とが、実は均衡しているのである。

  • 今日も嫌がらせ弁当

    映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    子どもが独り立ちする直前まで見せる親に対する生意気は当然のことだし問題ない。大抵の親が差し引きで考えれば引き合わぬ“育てる”ということをやり遂げうるのは、子のごく幼いときの無心の笑みや微笑ましい振る舞いで既に報われているから。だがそれはいつかは更生し、感謝に転じるほうが望ましい。それは親の満足の問題でなく、その謙虚さやそこまで思いが至ることがその後その子を生き易くするから。そういう超普遍的なことを優れた実話ネタをもとに説教臭なく楽しく見せた作。

  • 今日も嫌がらせ弁当

    映画評論家

    北川れい子

    中井貴一のハイテンションなナレーションに誘われ、つい見てしまうNHKの“サラメシ”。ランチや弁当の中身もさることながら、日常の中で取材される人々の多種多様な仕事も私には面白い。実話がベースというこの作品の母親は、いくつもの仕事を掛け持ちしながら、反抗期の娘の弁当作りに工夫を凝らす。反抗期といっても大したトラブルがあるワケでもなく、シングル・マザーの母親も楽天的、あとは凝った弁当と些細なエピソードがあるだけ。サラっと観られる消化のいい映画。

  • ザ・ファブル

    映画評論家

    松崎健夫

    大阪には“こなもん”が多い。それは、たこ焼きやお好み焼きなど小麦粉を原料とする食べ物を指すが、水でといた生地を焼くので基本的に熱い。それゆえ「殺し屋が殺しを封印される」という弱点と「猫舌の男が“こなもん”の聖地に渡る」という弱点とが不思議な符合を生み出すのだ。また、大阪は会話のテンポが早い。同様に、岡田准一の身体能力を活かしたアクションは、ワンカットではなく細かいカットを割ることでテンポを生み出している。つまり大阪が舞台であることは必然なのだ。

  • ザ・ファブル

    映画文筆系フリーライター

    千浦僚

    南勝久『ナニワトモアレ』は結構熱く読んでた。その主人公グッさんのもっぱら気合いでやりきるケンカ描写はヤンキー世界におけるリアリズムの最長不倒距離をやりきったものだと思うがそこを越えての『ザ・ファブル』、現在も堪能してます。その、暴力のプロがそれを封印して普通を生きる話、実写化するとしてこんなの演じられる人いる? に対して、まったく似てないのにそのキャラを見事に翻案再現した岡田准一がやはり良い。Tシャツ短パン姿のバルクがヤバい。壁虎功もヤバい。

  • ザ・ファブル

    映画評論家

    北川れい子

    冒頭の血と死体の大盤振舞にアソビを加えた演出が効果的で、以降のヤバイ場面も屈託なく楽しめる。そして岡田准一のおとぼけ演技。いつも楷書で書いたような演技が多いのに、今回はひらがな、カタカナふうの演技で殺しを禁じられた殺し屋を演じ、しかも超ネコ舌という設定、シリーズ化してほしいほど。終盤の数十人のスタントマンが参加しての工場内アクションも、人もカメラもよく動き、感心する。柳楽優弥の「ディストラクション・ベイビーズ」ふうキャラと演技も小気味いい。

  • こはく

    映画評論家

    吉田伊知郎

    監督の個人的体験に基づいた内向きの企画かつ、淡々とした描写が続くだけにノレないと辛いところだが、未知数の大橋を抜擢したことで刺激をもたらす。新井浩文にも似た相貌を持つ大橋は、芸人を漫才人間と役者人間に分類する香川登志緒に倣えば後者のタイプに当たり、舞台でいつもキョドっているのとは別人の様に奥行きのある存在感を見せる。井浦が憎しみを抱く父の若い頃を二役で演じているのも終盤の展開を思えば意外だが、異物を混入させる演出が普遍性をもたらすようだ。

  • こはく

    映画評論家

    上島春彦

    長崎の御当地映画、ずっと昔に消えた父を今さら探すことになった兄弟の話で、兄弟それぞれの事情と温度差が鍵となる。微妙にネタバレ厳禁なので書ける範囲で書くと、これは人ではなくむしろ土地や路地へのこだわりの方が面白い。ふと入った道に突然記憶が蘇る、その至福、というのは誰にも覚えがあるだろう。ロケーションが効いており、これが御当地映画の良さ。行ったことはないが、ここは海を見下ろす坂道の街なんだね。エンクミちゃんと井浦新の一人二役も興味深い趣向であった。

  • こはく

    評論家

    上野昴志

    ゆるいなぁ。こういう話だから緩い、というのではない。冒頭の海を撮ったショットを皮切りに、一つ一つのショットが長すぎるのだ。長回しが生きるのはそこに動きがあるからだが、こちらは静止した画面がただ長い。典型的なのは、新が机の前に座っているのを横から撮ったショット。作り手はそこに思い入れをしているのかもしれないが、それをただ眺める観客のことも考えてほしい、というのは半分冗談だが、各ショットを少しづつ縮めて、全体で15分ほど短くすれば締まったろうに。

  • Diner ダイナー

    映画評論家

    吉田伊知郎

    原作者に敬意を表して〈ゴミビデオ〉を目指したのかは定かでないが、蛇が出そうで蚊も出ぬ内容。残虐・恐怖・ユーモアが皆無のまま父の肖像画を飾り立てることに執心するニナガワ絵巻を延々見せられ、満腹感を越えて吐き気を催すほど。藤原竜也が例によって例の芝居で全てを台詞で説明。大仰で幼稚な演技ばかりの中、玉城の好演が唯一の救い。映像を喚起する原作の方が映画化が難しいのは分かるが、清順・三池・園あたりが自分の世界に引き寄せれば原作とうまく均衡が取れたのでは。

  • Diner ダイナー

    映画評論家

    上島春彦

    ティナのダイナー・コスチューム、その腰のくびれにひたすら感動。50センチちょっとだろう。人間一生のうちで、こういう「絶景」を撮ってもらえる機会というのはそうはない。SFXでちっちゃく加工された奏多もやけに可笑しい。これが殺し屋たる彼のいわば武器だというのだが。実話怪談でおなじみ、平山夢明のフィクションがスタイリッシュに変身を遂げた。監督は、自分の父親の写真を食堂の関係者として紛れ込ませたり芸が細かいが、原作の偏執的な感じが薄らいでそこは残念かも。

  • Diner ダイナー

    映画評論家

    上野昴志

    タイトル前の玉城ティナ扮するオオバカナコ(大馬鹿な子?)のカワイソーな身の上を語るシーンが長すぎる。そのわりに、よくわかんないんだけどね。本筋は、藤原竜也演じるボンベロの派手派手しいレストランでのお話だが、そこに登場する役者の扮装や衣裳も、内装に負けない華やかさで眼を捉えるものの、厚塗りのイメージを押し並べるわりに、画面の躍動感が乏しい。最後のドンパチも、往時の香港映画の飛翔する力動感には遠く及ばない。玉城ティナが次第に可愛くなるのはいいが。

  • 新聞記者(2019)

    映画評論家

    吉田伊知郎

    日本語のニュアンスに欠けるシムの演技に最初は引っかかるが、韓国人の母を持ち米国育ちという設定が判明すると気にならなくなり、日本のアーパー女優では出せない理性的な存在感が際立つ。露骨にモデルの事件が分かるだけに、物語を拡散させずにシムと松坂に絞って緊迫感のある画面を維持し続けた演出が意外なまでに良く、ウエットなパートも巧みに処理している。クライマックスで一気に創作に舵を切るのが不満だが、こんな企画が見当たらない昨今の日本映画としては画期的な一作。

  • 新聞記者(2019)

    映画評論家

    上島春彦

    これがモリカケ物のドキュメンタリー・ドラマではない、という点は前提としても、年金問題で国から「お前ら貧乏人は退職したらとっとと死にやがれ」と宣告された身としては、こうした政権告発映画には頑張ってもらいたい、と切に思う。腐敗した政権を生き延びさせているのは誰なのか。内閣情報調査室です、と言ってしまうとかえって間違いで、やっぱりそれはマスコミなんですよ。韓国映画「サニー」では普通の美少女だったシム・ウンギョンが気骨ある記者に扮して出色の出来である。

  • 新聞記者(2019)

    映画評論家

    上野昴志

    シム・ウンギョンと松坂桃李、二人の主役が良くやっている。とくに最後、道路を隔てて顔を見合わせたときの両者の微妙に違う表情が、このあとの結末を宙吊りにして観客に課題を手渡す。ただ、韓国のポリティカル・サスペンス劇などに較べると、全体の緊迫感がやや不足だが、これは、たんに本作だけの問題というよりは、日本映画が、現実にはいくらでもネタはあるのに、こういう題材を避けてきた結果ではないか。田中哲司扮する松坂の上司の言動は、いまの内閣の本音そのままだ。

1-20件表示/全251件