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  • 専門家レビュー一覧

専門家レビュー一覧

  • 半世界

    松崎健夫

    映画評論家

    炭も人も「関係性をじっくりと作り上げることが重要ではないか?」と問いながら、他人の気持ちを汲むことの難しさも提示阪本順治監督は本作においても、登場人物の立ち位置に高低差を設けることで、各場面におけるイニシアティブのありかを視覚的にも表現。世界と世間、あるいは、都市と地方の乖離を描くことで、「ディア・ハンター」(79)の底辺に流れる精神を日本の地方を舞台に成立させようとしている感もある。無骨な眼差しを放つ市井の人間を演じた稲垣吾郎が素晴らしい。

  • 半世界

    千浦 僚

    映画文筆系フリーライター

    あるキャラクターがアリかなしか、成立するかどうかはピンポイントなこと、そのポイントの純度の高さだと思う。クレイグ・トーマスの小説『ファイアフォックス』でソ連にミグを盗みに来た米空軍パイロットミッチェル・ガントがあまりにもキョドッた男なので協力者たちは訝しむが、誰かが彼に、あんたはあれに乗って飛びたいか、と問うとガントは激しい渇望を表し、質問者は、ああこいつなのだ、と了解する。炭焼き窯の炎を見つめる稲垣吾郎の黒々と光る瞳にそれと同じものを見た。

  • 半世界

    北川 れい子

    映画評論家

    3人の男たちそれぞれに、妻役の池脇千鶴に、この町の人々やここに流れる時間に、気がついたらしっかり同化、映画に向かって挨拶したくなった。特にオレたちは正三角形だと言いながら、二等辺三角形の底辺という立場で稲垣吾郎と長谷川博己をさりげなく支えている渋川清彦。渋川と父親役・石橋蓮司とのやりとりなど、もう絶品。阪本映画特有のガムシャラ性が健在なのも嬉しい。タイトルからも伝わってくる、生きるということの羞恥心も見事。久々に味わう日本映画の秀作だ。

  • ふたつの昨日と僕の未来

    北川れい子

    この映画を製作した愛知・新居浜市は実に太っ腹!! 冒頭にかつてこの地で栄えた別子銅山の写真が使われているので、それ絡みのハナシかと思いきや、ダメダメ公務員のサンプルのような若い主人公を登場させ、パラレルワールドまで用意して、なだめすかし……。いわゆるご当地映画とは異なるエンタメ系を狙ったのだろうが、主人公が甘ちゃんすぎて、どの時空間でアタフタしようがこちらに何も届かず。で、五輪のマラソン金メダルは、夢なの、現実なの?ご当地映画の進化型もつらいのよ。

  • 来る

    松崎健夫

    〝あれ〟は、弱くて脆いものを狙ってやって来るという。それは現代社会における人間同士のコミュニケーションの欠落や、ネット社会におけるセキュリティの脆弱性に対するメタファーのようにも見える。〝あれ〟の存在を何となく感じさせるため、望遠レンズを多用して常に画面の前を人やモノなどによって少しだけ遮らせていることが窺える。また過度な情報量を詰め込んだ中島哲也節ともいえる画面構成や、瞬きひとつしない松たか子によるやりたい放題にも見える演技アプローチが秀逸。

  • ニセコイ

    松崎健夫

    劇中の現実と劇中劇という入れ子の構造を持った「ロミオとジュリエット」がもたらす改変。その改変が男女の心の揺らぎを互いに同期させ、描写の対比が生まれることで本作の終幕に違和感を持たせない。同様に、偽物の恋を描くことで観客をミスリードさせてゆく展開にも違和感を抱かせない。つまり、劇中の登場人物が抱く先入観だけでなく、観客の作品に対する先入観をも操作しながら巧妙に物語を展開させていることが窺える。寡黙なヒットマンを演じた青野楓の佇まいが素晴らしい。

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