サクリファイス(2019)の映画専門家レビュー一覧

サクリファイス(2019)

東日本大震災を題材にしたドラマ。かつて新興宗教団体“汐の会”で東日本大震災を予知した翠は、今は女子大生として日々を過ごしていた。だがその頃、大学周辺では三つの事件が立て続けに発生。同じ大学の塔子は、同級生の沖田に疑惑の目を向けるが……。出演は「暁闇」の青木柚、「聖なるもの」の半田美樹。立教大学映像身体学科の第一回スカラシップ作品に選出された壷井濯の脚本の映画化で、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019優秀作品賞(長編部門)を受賞している。
  • 映画評論家

    川口敦子

    カルト教団、猫殺しの少年、大地震。世紀末から今世紀へと鮮烈に記憶された事件や出来事をふまえ、選ばれた者と普通の人、境界の向こうとこちら、夢、現実、生と死、犠牲を求めている世界――と、わなわなとした不穏さを呑み込んだ物語を目と耳にねじ込むノンシャランとしてしぶとい映画の感触。深遠さを玩びながらジャンル映画としてのスリルを何より追究するかにも見える、その摑み所のなさを前に判断停止状態に陥った。これを新しさと呼んでいいのか、ふがいなく迷っている。

  • 映画評論家

    佐野享

    現実の不条理や不安感、痛みをなんとか映像に定着させようとする真摯さは大いに讃えたい。若い役者たちの顔、たたずまいもわるくない。しかし、映画の強度に耐えうる身体性を獲得する以前の役者たちを象徴主義的な画面のなかで動かそうとすると、なにやらこそばゆい居心地の悪さがただよってくる。彼らを映し出すならば、半端にそれっぽい画面をつくるよりもアマチュア的無造作にもっと依りかかってよかったのでは。将来「壷井濯の原点」と呼ばれる可能性に期待をこめて。

  • 映画評論家

    福間健二

    課題「東日本大震災をテーマに」からこれだけの作品ができた。坪井監督の表現は、若さや資質で説明できる範囲をこえるものだ。助言と協力も大きかったろうが、映画以外のジャンルも含めた表現の現在の、いわば罠に進んでハマっている。「走れ、ミドリ」がまず効いた。それを受けて走りつづけるヒロイン翠の表情が、幼いときも七年後も感じさせる。若い世代の内側にあるもの、取材したもの、パクリ的なものが絡んで、詩的な引力を生みだすが、後半は画が使いまわしになりすぎたか。

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