「レンタネコ」のストーリー
サヨコ(市川実日子)は、都会の一隅にある平屋の日本家屋でたくさんの猫と暮らしている。亡き祖母の仏壇を守りつつ、謎の隣人(小林克也)にからかわれながらも、心の寂しい人に猫を貸し出すレンタネコ屋を営んでいた。サヨコは猫たちをリヤカーに乗せて街へ出かけ、様々な人に出会う。猫たちを連れ川原を歩いていたサヨコは、上品な老婦人・吉岡さん(草村礼子)に声をかけられる。吉岡さんは14歳の茶トラ猫に興味を示し、サヨコは猫が住みやすい家か審査するため、彼女の暮らすマンションに向かう。彼女は、夫と飼い猫を亡くしてひとり住まい。子どもはとうに巣立ってしまったという。息子が小さい頃好きだったというゼリーを食べながら、身の上話をする吉岡さん。サヨコは、そんな彼女の姿を見て審査を合格とする。吉岡さんは借用書の期限の欄に“私が他界するまで”と書き記す。数日後、サヨコは寂しげな中年男・吉田(光石研)の姿を発見する。寂しい時には猫がいちばんとサヨコに促され、吉田は審査のため自宅にサヨコを招き入れる。彼は単身赴任中のサラリーマン。離れて暮らすうちに一人娘はすっかり年頃になり、父親を避けるようになってしまったとうなだれる吉田の靴下の先には大きな穴が空いている。彼は審査に合格し“家族の元に帰るまで”と借用期限に書き込み、一匹の仔猫を借り受ける。「ハワイ旅行が当たる」というのぼりにつられて、レンタカー屋の中に入っていくサヨコ。そこには生真面目そうな女性店長・吉川(山田真歩)がいた。AからCランクまでの料金設定に対して喰ってかかるサヨコに問い詰められた吉川は、自分はCランクだと漏らす。聞けば、吉川には話し相手がおらず、寂しい毎日を送っているという。サヨコは彼女に一匹の三毛猫を貸すことにする。借用期限は“待ち人現れるまで”。中学時代の同級生・吉沢(田中圭)とすれ違ったサヨコ。子どもの頃から嘘つきで有名だった吉沢をサヨコは避けるが、彼は明日インドに発つから最後の夜は女の子と一緒に過ごしたいとメス猫を貸してくれるようサヨコにせがむ。きっぱり断って家に帰るサヨコだったが、吉沢はサヨコを追って家までやってくる。縁側で彼と話しながら、サヨコは中学時代を思い出す。学校に馴染めない二人は保健室の常連で、お互いを“ジャミコ”、“嘘つきはったりの吉沢”と呼び合っていた。吉沢は縁側で猫とたわむれ、結局、猫を借りずに去っていく……。