「ザ・シンガー」のストーリー
1969年7月。インターナショナル・ホテルの前に2台の高級車が止まり、中からサングラスをかけたエルビス・プレスリー(カート・ラッセル)が現れ、群がるファンをよそにホテルの一室へと消えた。部屋でテレビの画面を見つめる彼。妻のプリシラ(シーズン・ヒューブリー)が訪ねてきても、どこかよそよそしく、テレビを見つめたままだ。テレビでは、9年ぶりにはじまるエルビスのライブ・ショーに関するコメントを報じているのだ。彼は、今、そのショーのことで頭がいっぱいだった。1945年、ミシシッピー州のペロ。生まれてまもなく死亡した双生児の兄ジェシーの墓参りをする10歳のエルビス。彼は母グラディス(シェリー・ウィンタース)の愛情を一身に集め、幸せな日々を送っていた。13歳の時、テネシー州のメンフィスに移ったエルビスは、ヒュームズ高校でギターの弾き語りを得意とし、女性徒たちの人気を集めた。そしてガールフレンドのボニー(メロディ・アンダースン)にすすめられて校内バラエティ・ショーに出演し、みごと優勝する。1953年、高校を出たエルビスは、トラックの運転手として働きはじめるが、母の誕生祝いに近くのサン・レコードでパーソナル・レコードマイ・ハッピネスを吹き込んだ。黒人のフィーリングをもつと興味をもたれた彼は、1年後、社長のサム(チャールズ・・サイファーズ)の立ち合いでザッツ・オール・ライトを吹き込み、この時のエルビスのアクションに目をつけたトム・パーカー大佐(パット・ヒングル)は、彼のマネージメントを引き受けた。そしてメンフィスのローカル局からテネシー州一帯に、そしてRCAビクターへの移籍、ハートブレイク・ホテルの発売、TVエド・サリバン・ショー出演、ハリウッドの映画会社と長期契約と、またたく間に人気タレントになっていった。1958年、軍隊に召集されることになり、不安を抱いている時、最愛の母グラディスが亡くなった。軍隊,で西ドイツに行った彼は、14歳の少女プリシラと知り合い、彼女の両親に結婚の承諾を得た。除隊後22歳になったプリシラと結婚し、1年後に娘リサが誕生したが、マンネリした生活に不満をもち、徐々に彼の行動はすさんでいった。そしてプリシラとの間にいつしか深い溝ができていく…。1969年、エルビスはラスベガスのショーにそなえ、グループとレッスンを重ねた。そして、インターナショナル・ホテルの夜、白い衣裳でステージに立ったエルビスには、昔の熱気が甦えり、観客はおしみない拍手を送るのだった。