「野性の少年」のストーリー
フランス中部の森林地帯アベイロンで、獣の習性をもった、野性の少年が捕えられた。百姓たちはその処置にこまったが、ひとり、レミー老人(P・ビレ)だけが、この野性児に愛情ある接し方をした。やがて、少年はパリの研究所に、研究のため引き取られた。そこのイタール博士(F・トリュフォ)と上役のピネル教授(J・ダステ)が少年を検査した結果、彼は赤ん坊の時、両親に喉を切られ、死んだと思って森に捨てられた、ということになった。この傷によって、少年は十二歳位だと判断された。少年は世間の関心を集め、見世物にされたり、悪戯されたりした。その興味が薄れた時、少年はもっと悲惨に扱われた。これをみかねたイタールは、少年の薄弱的症状は、人間文化の不足によるものだとして、自分の家に引き取って、自説を証明しようとした。ビクトル(J・P・カルゴル)と名づけられた少年は、その日から、人間になるための困難な道を歩みはじめた。イタールはその過程を、刻明に記録していった。それは人間味あふれる闘いであり、感情のコミニュケーションであった。家政婦のゲラン夫人(F・セニエ)も、やさしい心で少年に接し、協力した。少年の感性は、目覚めつつあった。初めて涙をながし、初めて「ミルク」と言った。そして、不当に罰せられると、反抗するようになった。これは大きな進歩であった。イタールは喜びのあまり叫んだ。「君はもう人間だ」。しかし、イタールにも失意の日はあった。絶望的になり、自分のしていることの意味がわからなくなることもあった。そして、ついにある日、ビクトルが逃亡した。だが、人間的感情を身につけてしまった少年には、一人ぼっちで自然にいることは耐えられなかった。みじめな様子でもどってきた少年を見て、イタールは自分の行ってきたことの成果をこんどこそ確信した。その時から、また彼とピクトルの新たなる勉強が、始まったのだった。