「グレイト・ガッボ」のストーリー

ガッポは女助手のメエリイをつれてニュー・ジャージー地方を歩く腹話術師だった。彼は極端な利己主義者で冷ややかな芸人である。自分が世界の中で一番偉大な芸術家だと己惚れている彼はメエリイに対しても横暴で、口きたなく罵ることも度々であった。メエリイはよくこれを忍び彼の言うがままに彼に仕えていたが或る時舞台での些細な失策を散々に罵られたことはさすが従順なメエリイの心をもひどく憤らせ遂に彼女をガッポのもとから去る決心を起こさせたのである。去るに臨んで何故か彼女瞼には涙が溢れた。ガッポも彼女が再び何時の日にか自分のもとに帰って来るものと信じていた。2年の月日が流れた。ガッポは今では一流のレビュー劇場に「偉大なるガッポ」として迎えられる身となっていた。そして皮肉な運命はガッポが働く同じ劇場の舞台にメエリイをも立たしめた。彼女はレビューのスター女優としてソプラノに舞踊にその妙技をしめしていた。ガッポはメエリイが詫びを入れて戻って来るだろうと思っていたが、この様子では帰って来さそうもないのである時カフェーで彼女と合った時ガッポは自分の人形の口から彼女の心をひるがえさせようといろいろと話しかける。その談話中彼は始めて自分がメエリイに恋をしていることを発見する。だが彼女はすでに相手役のフランクと恋仲で結婚の約束までした身であった。ガッポはからこうした申し出をうけた彼女は涙ながらにそれを断らなければならなかった。これはガッポにとって深い痛手であった。彼は苦しい胸の中を人形に救いを求めた。彼は自分の他の半面を人形の口から見出だそうとした。二つの彼の性格は、遂に混乱錯乱し彼は発狂してしまった。劇場は彼の出演を断った。ガッポは一人悄然と自分の広告が除かれてゆく劇場の前をうつろな目を見開きながら何処ともなく立去ってゆくのであった。