「クモとサルの家族」のストーリー

江戸時代初期。椿藩と火ノ藩の中立地帯にある森の中で、夫サル(宇野祥平)と妻クモ(徳永えり)の家族が住んでいた。サルは元忍びで、血生臭い仕事は苦手なため現役時代はもっぱら争いの交渉人として活動。天下泰平の時代となった今では主夫として家庭を守っている。クモは他国から声が掛かるほどの売れっ子の忍びで、妻の稼ぎがこの家族の生命線だった。実子である一番下の弟・兎、クモの連れ子である長女・蝶、孤児の長男・竜と次女・豪の四人の子供たちと共に暮らしていた。ある日、国境沿いにある禿山峠に一人の老人(奥田瑛二)が迷い込んでくる。峠には、侵入者を一撃で射止めるよう火ノ藩から遣わされた凄腕の狙撃手・天狗(緒川たまき)がいた。老人を発見したサルの子供たちは危険を顧みずに助けたところ、老人は記憶が曖昧でなぜ峠に舞い込んだのか覚えておらず、サルの家に置くことに。老人の姿に行方不明になった自分の忍びの師匠を重ね、哀れみと親しみを感じたサルは、老人を家族の待つ家に帰してやりたいと強く思った。クモが老人の身元について調べると、姥捨など厳しい政策を実行してきた椿藩藩主の貴虎であることが判明。戦の最中に家臣の謀反に遭い、家族を目の前で殺された衝撃から一時的に記憶をなくしていたのだった。火ノ藩は貴虎に莫大な賞金を懸けており、賞金稼ぎたちに襲撃されたサル一家は、椿藩に入る唯一の道で天狗の狙撃と傭兵の追撃の板挟みになる。