「あつい胸さわぎ」のストーリー

港町の古い一軒家に暮らす武藤千夏(吉田美月喜)と母の昭子(常盤貴子)は、慎ましくも笑いの絶えない日々を過ごしていた。小説家を目指して念願の芸大に合格した千夏は、授業で出された創作課題『初恋の思い出』に頭を悩ませていた。千夏にとって初恋は、忘れられない一言のせいで、苦い思い出になっていたのだ。その言葉は今でも千夏の胸に”しこり”のように残ったまま。だが、初恋の相手、川柳光輝(奥平大兼)と再会した千夏は、再び自分の胸が踊り出すのを感じて、その想いを小説に綴ることにする。一方、母の昭子も、職場に赴任してきた木村基春(三浦誠己)の不器用だが屈託のない人柄に興味を惹かれ、20年ぶりに訪れたトキメキを、同僚の花内透子(前田敦子)にからかわれていた。親子二人で恋の予感に浮き足立つ毎日。そんなある日、昭子は千夏の部屋で“乳がん検診の再検査”の通知を見つけてしまう。娘の身を案じた昭子は、当の本人である千夏以上にネガティブになっていく。だが、光輝との距離が少しずつ縮まっていく手応えを感じている千夏は、それどころではなかった。“こんなに胸が高鳴っているのに、病気になんかなるわけない”と不安をごまかすように自分に言い聞かせる千夏。少しずつ親子の気持ちがすれ違い始めた矢先、医師から再検査の結果が告げられる。初恋の胸の高鳴りは、いつしか胸さわぎに変わっていく……。