「海駈ける猛虎」のストーリー

スペインの植民地たるカンリー群島に漁獲を業とするラモス兄弟は仲良く暮らしていた。兄のルイスは人々から「海の猛虎」と言われる程の精倬な気象の持ち主で漁夫仲間を牛耳っていた。それに引かれて弟のカルロスは愛する女のためには肉親の兄を危険に陥れて顧みぬ程の狂おしい情熱の虜だった。弟に対しては親代わりの地位にあることを自覚して深くカルロスをいつくしんでいるルイスも、新たに島の住民となった美しい乙女コンスエロを愛するようになるとカルロスが彼女は兄さんを愛してなんかいないと中傷的な言辞を弄した時には、思わずも激して弟を打倒した。しかし直ぐに自分の短慮を恥じ且つは自分の義務を考えてコンスエロをカルロスに譲ろうと決心した。そのルイスの深い心を知らぬコンスエロは誤解して、内心ルイスを愛しつつも彼を軽蔑した。そのころ都から来たお転婆娘のルルは、男らしいルイスに思いを懸けた。そして終に嵐の夜甘言を以てカルロスを激浪逆巻く海に乗り出させた。このことを知ったルイスは弟の危急を救うべく猛然と起こった。一方コンスエロはルイスを愛する心を抑え切れず、平和の漁村の乱入者たるルルを村から追い立てた。狂乱怒涛を乗り切ってルイスはカルロスを救った。その時カルロスは死に直面した恐れから始めて我が非を悟った。誤解も去り相愛するルイスとコンスエロが神の前に永劫の契りを結ぶ時には、嵐も去った朝なぎの海上には陽光が一面に輝いた。