「有頂天時代(1930)」のストーリー

テート大学の噂の種は、もっぱらラグビーのキャプテンであるトム・マーローと、大学一の美人と称されるパトリシア・ビンガムとのロマンスの上に置かれている。トムは今までたびたびパトリシアに結婚を、申し込み、付け文までして彼女の承諾を得ようとあせっていたが、顔に自信のあるパトリシアの方では柳に風でなかなか真面目にとりあわない。さてテート大学の名誉をかける蹴球戦が2日の後に迫った時、トムは天文学が落第点なので、今一度試験をうけ直さなければならぬということになる。トムはパトリシアに教えを受けたいとたのんだが、パトリシアは忙しいからとて、自分の代わりに従妹のコンスタンスを紹介する。いままで1度も男との浮いた噂を立てられなかった内気なコンスタンスのつつましやかな美しさがすっかりトムの心をとりこにしてしまう。安心して紹介した従妹のコンスタンスとトムが恋に陥ったことを知ったパトリシアは急にあわてだして、トムの心を取り戻すべく、今度の蹴球戦にテート軍が勝てば早速トムと結婚すると全校に発表する。弱ったのはトムである。試合には勝ちたい、しかしパトリシアと結婚するのは嫌だ。このジレンマに陥ったトムは自然、試合を投げてかかった。キャプテンがそんな調子なので試合はテート側に不利で進行する。だが公判に至って補欠に出たボビー選手の怪我の巧名からがせん形勢一変テートの勝利となってしまった。約束通りにトムとパトリシアとの結婚式が挙行されることになる。今さら約束を破るわけにゆかぬトムは深くヴェールを被った花嫁の手を引いていやいや祭壇の前に誓ってからヴェールを脱いだ花嫁の顔を見てトムは驚いた。それはパトリシアではなくて、自分の愛するコンスタンスだったのである。自分を犠牲にすることのできる人間のみの知る朗らかな微笑みでパトリシアは新郎新婦の幸福を祝した。