「ある画家の数奇な運命」のストーリー

ナチ政権下のドイツ。少年クルトは叔母エリザベト(ザスキア・ローゼンダール)の影響を受け、芸術に親しむ日々を送っていた。ところが、元々繊細だったエリザベトは、やがて精神のバランスを崩し、強制入院させられた末、国家が進める安楽死政策によって命を奪われてしまう。やがて終戦を迎えると、成長したクルト(トム・シリング)は、東ドイツの美術学校に進学。そこで、亡きエリザベトにどこか面影の似た女性エリー(パウラ・ベーア)と出会い、恋に落ちる。だが、元ナチ高官の彼女の父カール(セバスチャン・コッホ)こそが、エリザベトを死へと追いやった張本人だった。その残酷な運命に気付かぬまま、2人は結婚。やがて、東のアート界に疑問を抱いたクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前、自由を求めてエリーと共に西ドイツへ逃亡する。晴れて美術学校で創作に没頭するクルトだったが、教授から作品を全否定され、もがき苦しむことに。それでも、魂に刻み込んだ“真実はすべて美しい”というエリザベトの言葉を信じ続けたクルトは、ついに自分だけの表現方法を見つけ出し、新作を完成させる。だがそれは、罪深い過去を隠し続けた義父カールの欺瞞を告発するものでもあった……。