「浮気名優」のストーリー

映画女優メーヴィス・アーデンは宣伝係のモルガンを連れて、首府ワシントンへ自分の主演映画「浮草の女」の上映に挨拶に出て非常な人気を挙げた。彼女はその夜ハリスバーグというまちへ行かねばならぬ予定になっていたのだが、政治家ハリガンと食事を共にする約束をした。彼女は会社との契約で五年間結婚できないことになっている。モルガンは云ばその監視役として会社から任命されているのである。だから彼はメーヴィスがハリガンと会うのを嫌い、食事の席に新聞記者連を呼び集め記事をとらせ二人の邪魔をした。ハリガンはその時ちょうど選挙に出馬していたのでこのために人気の落ちることを非常に恐れたが、事態はかえって彼に有利に展開して行った。メーヴィスはハリガンとハリスバーグで再会を約して、自動車を走らせた。このことは同行のモルガンには秘密にしておいたが、彼はそれを知って途中自動車が故障を起こした時、彼女をハリガンに合わせないためにこの片田舎の安宿に引き止めようとした。ところがこの宿の前庭を借りてガソリン給油所を経営しているバッドという青年がいた。メーヴィスはこの青年に心を動かして、この宿に滞在する気になった。バッドが機械に興味を持ち、今新しい録音装置の発明に熱中していることを知ったメーヴィスは、彼を誘ってハリウッドへ連れて行く約束をした。モルガンは二人の仲を警戒し、幸い宿の娘ジョイスがバッドの恋人であるのを知り、間もなく二人の子供が生まれるのだと偽ってメーヴィスとバッドの約束を破らせハリスバーグへ発とうとした。ちょうどその時首都からハリスバーグへ電話をかけたハリガンは、交換手の間違いからメーヴィスが誘拐されたと誤解し、警察へ知らせて捜索を開始した。ラジオでこれを知った女中グラディスは、直ぐ警察へ密告したので、たちまた警察隊が駆けつけ何も知らぬモルガンを逮捕した。この時になって初めて、メーヴィスはモルガンが彼女の邪魔ばかりするのは、監視の役目よりも、実は心の中で自分を愛しているからだということを知って、二人は固く相擁したのであった。