「ミスター・ウー」のストーリー

10歳の時、中国貴族の生れのウーは英国に白人の風習を学びに送られた。それは彼が成人した後、他日外国からの圧迫を被つた時に対抗して戦うための下準備であった。十五年を淋しく海外に暮した後、彼は故国へ帰り、父亡き跡を継ぎ妻をめとった。が、その妻も世を去り、今では愛娘ナン・ピンとの二人暮しであった。ナン・ピンは中国である大事業を計画している英人グレゴリーの息子バジルとご恋仲となった。バジルにとってはこの恋は単なる慰みであったが、ナン・ピンにとってはそうではなかった。バジルが近日英国に帰らねばならぬとナン・ピンに語った時に、バジルはナン・ピンが既に彼の子を宿しているのを知って慌てた。その後、ナン・ピンはバジル一家の者と会した時に黄色人の子は白人に快く迎えられないということを知った。バジルはやがて己れの誤を知り、ナン・ピンを訪れ結婚を申し出たが、時既に遅くこのことはウーの知る所となり、バジルは捕えられ、ナン・ピンは悪魔に魅かれたるものとして父親に殺された。グレゴリー夫人はバジルの失跡を心配しウーに助力を求める。ウーはグレゴリー夫人とバジルの妹ヒルクとを自宅に招き、若しヒルダが己れの云うことを聞いたならば、バジルの命を助けるという。ヒルダは兄のために犠性となろうとした。その時、グレゴリー夫人は己れのスカーフに、家を出る時中国人の女中が附けて置いてくれた毒薬を発見し、それによってウーを殺してしまう。ウーは死際になおバジルを殺さんとしたが、それもナン・ピンの活躍によって妨げられたのであった。