「三つの情熱(1928)」のストーリー

世界一を誇る造船所の社長として世にときめくレックサムは受爵してベラモント子爵と称した。彼の事業と金とに対する極端な考え方は彼から人間性を奪ってしまっていた。が、彼は息子のフィリップに対してだけは慈愛深い父であった。フィリップがバーリントン卿の愛嬢ヴィクトリアと共に造船所を訪れた時、一従業員が職務の犠牲となって斃れた。この処置についてのレックサムの冷酷な態度はフィリップを懊悩せしめた。それを忘れるために彼はヴィクトリアと共に酒場に行った。彼は富める階級の人々が奢侈と放免とに惑溺しているのを知った。また己れの母が若い人々と踊り狂っているのを見た。このフィリップの母というのはドーヴァー卿の娘で金のためにレックサムと結婚したのであった。オクスフォード大学に帰ってからフィリップはアロイシアス教父の感化を受け社会向上の理想に燃え救世の仕事を続けることになった。ベラモント子爵邸で知名の士を招じて宴会が開かれた時もフィリップは父の願いにもかかわらずそれに出席を肯んじなかった。この話を聞いたヴィクトリアは彼の心を動かすものは、金や宗教よりも大きな力、すなわち愛の力であるとして彼の心を昔に返すことを誓った。が、そのヴィクトリアもフィリップの言動に感激して彼女も共に伝道事業に携ることになった。そうしている内のある夜、毛無しの男に襲われたヴィクトリアをその危険からフィリップが救った時、2人の心は初めて結ばれた。その後、レックサム造船所では遂に総罷業を決行し、すべての機関は停止した。強情我慢なレックサムは自ら機械を運転しようとしたがその激しい労働に堪えず打倒れる。レックサムは臨終にフィリップを呼び寄せ神の心をもって将来工場を経営することを遺言した。フィリップはヴィクトリアと結婚した。工場は彼の手の下に新しく甦るのであった。