「種まく旅人 夢のつぎ木」のストーリー

豊かな日差しと土壌に恵まれ、全国屈指の桃の名産地として知られる岡山県赤磐市。赤磐市役所に勤める27歳の片岡彩音(高梨臨)は9年前の春、女優になる夢を胸に故郷の赤磐から東京へ向かった。彩音の実家は赤磐で桃農家を経営、両親が亡くなってからは兄・悠斗(池内博之)が一人で桃の栽培を行っていた。そんな矢先、悠斗が病に倒れてしまう。ひと夏だけの約束で桃の栽培を手伝うため帰郷した彩音だったが、悠斗は帰らぬ人となってしまう。彼が最期まで抱いていた夢は、接木に成功した桃の新種『赤磐の夢』を新種登録することだった。悩んだ挙句、彩音は女優の夢を諦め赤磐に戻り、高校生の妹・知紗(安倍萌生)と二人で暮らしながら兄の夢実現を目指し『赤磐の夢』の栽培を始める。悠斗の遺志を叶えるため、彩音は桃の酒を作る宝町酒造の高橋親子(井上順、辻伊吹)や、レストランを営む義姉の美咲(海老瀬はな)ら桃を愛する周囲の人々に助けられながら、畑と市役所の仕事を両立していく。そんなある日、農林水産省の職員・木村治(斎藤工)が桃の栽培についてレポートを書くために赤磐にやって来る。28歳の治は故郷の大分県臼杵市でお茶農家を営む兄夫婦(吉沢悠、田中麗奈)の影響で、日本の農業政策を農家が流す汗に見合うものに変えたいと願い農林水産省に就職。だが忙しい毎日の中で理想を見失いかけていた。そんな折、次官の太田(永島敏行)から赤磐の生産現場を調査するよう命じられたのだった。上司の岩渕(津田寛治)から案内役を任された彩音は、治を畑や直売所などに連れて行くが、治は馴れ馴れしく口説き文句を連発し、とても桃のことを真剣に考えているようには見えない。そんな治に苛立ち、仕事と割り切って付き合う彩音だったが、毎日一緒に過ごすうちに治の軽薄な振る舞いに隠された情熱に気付き始め、いつしか二人は夢を語り合う仲になっていた。ある日、防蛾灯に照らされた畑で『赤磐の夢』を堪能しているうちに終電を逃した修は片岡家に泊まることになり、二人は眠れない夜を過ごす。後日、悠斗が4年前に出願していた『赤磐の夢』品種登録の可否通知が農林水産省から届く。結果は「拒絶」。うなだれる彩音に対し、彼女のこれまでの努力を知る人々は自分の幸せを優先し、新しい夢に向かって歩き出すよう励ますが、治だけは桃を諦めるのか、と問いかけるのだった……。