「ベケット」のストーリー

12世紀末。ヘンリー2世(ピーター・オトゥール)と、大補祭ベケット(リチャード・バートン)は学生時代から親交があり、心を許しあった仲だった。狩猟をしたり、女遊びをしたりしていた。2人の親交が深くなっていくにつれて、宮廷にも教会にも2人の間柄を快く思わぬ者があらわれた。だがヘンリーは気にとめず、大法官の職を復活させ、ベケットを任じた。そのことを最も苦々しく思ったのはロンドン司教フォリオーだった。司教はローマ法王庁に中傷させようと、カンタベリーの大司教に迫ったが、大司教はベケットの人物を見抜いていてそれを拒否した。ヘンリーとベケットは相変わらず親交を続けていたが、ベケットが人間として成長してくると、ヘンリーとの間に心の溝がうまれるようになった。ある日、好色なヘンリーに目をつけられた娘をベケットが救ったことから、ベケットの愛人グエンドリン(シアン・フィリップス)をヘンリーに与えることになったが、彼女は純粋な愛を知らぬヘンリーを嫌って自殺した。ショックだったヘンリーとベケットは一夜を語りあかした。やがて、2人はフランスの戦場へ行くことになった。ヘンリーは勝利を続け、後始末をベケットに任せて、女漁りに夢中になっていた。そのころ、大司教が死んだ。その後任にヘンリーはベケットを推した。フランスにとどまっていたヘンリーにとって、ベケットがいない毎日はいかにも退屈だった。そんなとき、教会の権利守護のための手紙がベケットからヘンリーに届いた。それが高圧的だと怒ったヘンリーはベケットを訪ね、2人は激しい論争をした。そのことから、ベケットはフランスに身を隠した。ヘンリーはベケットに対する愛と憎しみに心をかき乱され、「あの坊主をとり除くものはいないか」と口走ってしまった。居あわせた4人の侍従が、それを真にうけてベケット殺害に旅立った。ヘンリーは深く後悔した。ベケットの墓前で贖罪のムチをうけ、ベケット大司教を聖者としてその徳をたたえると宣言したのだった……。